自宅生活をちょっと楽しく:見た目が逆さの『サカサクラゲ』飼育方法
2020年05月17日 11:00
抜粋
自宅生活をちょっと楽しくしてみませんか?今回は、普通のクラゲと見た目が逆さの『サカサクラゲ』の飼育方法を解説します。意外と簡単なので、ぜひチャレンジしてみて下さい。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
サカサクラゲって知ってる?
クラゲと言えばプカプカと水の中を気持ちよさそうに泳いでいるイメージが強いと思います。
しかし、今回ご紹介するサカサクラゲは文字通り、上下反対、逆さまになって生活をしているクラゲです。触手を上に傘のほうを下にして水底に沈んでおり、傘が平らで少しへこんでいるため、水底や水槽のガラス面などに吸盤のようにくっついているのが特徴です。
パッと見、イソギンチャクのように見えますが、ちゃんと傘を使って泳いだり、触手を使ってエサとなるプランクトンを集めたりする姿を見ることができます。
クラゲなのに光合成?
一般的なクラゲは水中を漂うプランクトンを触手に絡めることで捕食しますが、サカサクラゲは必要な栄養の大部分を体内に共生させている褐虫藻(かっちゅうそう)の光合成に頼って生きています。
褐虫藻が太陽光を浴びて光合成をして、余った栄養分をサカサクラゲに与えることでお互いに共生しています。
しかし、褐虫藻の光合成によって作り出された栄養分だけでは栄養が偏ってしまうので、不足したタンパク質などはプランクトンを食べることで補っています。
サカサクラゲは植物のような動物のような少し変わった食事を行う生き物なのです。
逆さまな理由
サカサクラゲが逆さまになって生活を送るのにはもちろん理由があります。
体内に共生させている褐虫藻はサカサクラゲの足の部分に多く存在するため、彼らが効率よく光合成を出来るように、逆さになっていると言われてます。
また、自然界のサカサクラゲは褐虫藻が効率よく光合成を行えるように、陽の光が良く届く水深の浅い場所に生息しています。
日焼けをする?
人間が日焼けすると茶色くなるのと同じように、サカサクラゲもたくさんの太陽光を浴びると褐虫藻が多く繁殖するため褐色になります。
反対に太陽光が少ないと全体的に青色や白色に変化していきます。
しかし、褐虫藻がいなくても死ぬわけではなく、その場合は、自力で動物性プランクトンを補食して生きていくことができます。
飼うにはどうすればいいか
サカサクラゲを飼ってみたい!そう思った人はどうすればいいのでしょうか?
サカサクラゲは温暖な地域に生息しているため、日本では九州以南の暖かい海でしか捕獲することができないと言われています。ですので、本州の人はなかなか捕獲して飼うのは難しいでしょう。
しかし、落ち込むことはありません。
ネットショップでも比較的安価、おおよそ1匹1,500円前後で購入することができます。購入すると決心がついた人は是非調べてみて下さい。
サカサクラゲ飼育の注意点
サカサクラゲの飼育方法を紹介する前に1つだけ注意点があります。
一般的にサカサクラゲはあまり泳がず、水槽の底や側面に張り付いているため、他のクラゲのように水流を作る必要が無いと言われています。そのため、 フィルターのない「瓶」で飼育できるクラゲとして知られていましたが、実はこれは大きな間違いです。
確かに特殊な機材などは必要とはしませんが、「瓶」のような閉塞的な環境では水温の変化や水質悪化が激しいため、適した環境とは言えません。最悪の場合、2週間ほどでその多くは死んでしまうでしょう。
簡単に飼育できるとは言っても、最低限のろ過機能、一定量以上の水量を確保することが最低条件だと言えます。
飼育に必要な道具
サカサクラゲの飼育に必要なものを紹介します。
30cm以上の水槽
水槽は必要最低限の大きさである30cm以上のものが適していると思います。
それより小さいと、水質や水温が変化しやすいです。
飼育のハードルを下げるという意味でも30cmくらいの大きさは必要です。
ろ過器(水中ろ過機以上の機能でOK)
ろ過機についてはどのようなものでも構いません。
最低限、キンギョを飼育するときに使用するブクブク付きのろ過機以上のスペックがあれば問題なく飼育することができるでしょう。
水&人工海水の素
水、海水の素については水替えの際に使用しますので、あらかじめ準備してください。
人工海水の素は、最近は100円ショップでも購入することができます。
意外と簡単に入手できるのでご安心下さい。
ライト
前述のようにサカサクラゲは褐虫藻が光合成をするため、光が必要です。
太陽光を長時間当ててしまうと、水槽内にコケが大量発生したり、悪い微生物が繁殖してしまう恐れがあるため、市販のライトを準備するといいでしょう。
準備が難しい場合は短時間の日光浴でも問題はありません。
エサ(プランクトン)
こちらはタンパク質を補給するためのエサ(プランクトン)となります。
光合成による栄養補給だけだとクラゲはタンパク質が不足し、どんどん縮んでいってしまいます。
ネットショップで数百円で購入できるので、用意する事をお勧めします。
設置の際の注意点
まず準備した水槽を設置したい場所に置いてみましょう。
場所
後にも少し解説しますが、水温の変化が起きにくい場所が適しています。例えばリビングなどは人が常にいるので気温が変化しにくいです。反対に玄関は外気が入ってくるので、水温が変化しやすく飼育に適していません。
そのあたりを踏まえて設置する場所を決めて下さい。
設置する場所が決まったら人工海水の素をカルキを抜いた水に溶かし、海水を作ります。
既定の濃度(塩の比重1.022)にし、水槽にいれ、ろ過器、ライトを設置したら準備完了です。
水合わせ
水槽にサカサクラゲを入れる時は、いきなり中の水ごとドボンと入れてはいけません。水合わせと呼ばれる、「クラゲの水への慣らし作業」が必要になります。
届いたクラゲはおそらく、プラスチックの容器か、大きなビニール袋に入っています。これを一度ある程度の大きさの容器に移し、準備した水槽の水を少しずつ注いでいきます。1時間程かけて、ゆっくり水に慣らしてあげるとストレスを少なくすることができるでしょう。
これでサカサクラゲをお迎えすることが出来ました。
飼育のポイント
では長期期間飼育する上で押さえておきたいいくつかのポイントをご紹介していきます。
水温
サカサクラゲに適している水温は25度前後です。飼育されるクラゲの中でも水温の適応範囲が比較的広いため、ヒーターなどは使用しなくても室温で十分飼育が可能です。
比較的高温にも強いですが、低温では活動が鈍ってしまうため、冬場は水温が下がらないように注意が必要です。人が快適に生活できる環境ならサカサクラゲも元気に育ってくれると思ってもらえれば良いでしょう。
水換え
サカサクラゲの水槽は意外と水が汚れやすいのが特徴です。そのため週に1回は必ず水を交換するようにしてあげて下さい。
カルキを抜いた水道水に人工海水の素を混ぜ、既定の濃度で海水を用意しましょう。その際比重計があると簡単に海水が作れます。こちらも100円ショップに売っているので、同時に用意してあげて下さい。
水換えは水槽の水を1/3ほど抜き、1時間くらいかけながら少しずつ新しい水を足していってください。あまりに急に水を変えてしまうと、クラゲがびっくりして最悪の場合死んでしまうので注意が必要です。
日光浴
サカサクラゲは光合成を行うため、2日に1回程度は日向で日光浴をさせてあげると健康的に育ってくれます。
日光を当てると、触手を元気にパタパタと動かす姿が観察できると思います。
まるで日光に喜んでいるようで可愛いですよ。
自宅生活を楽しく
意外と簡単に自宅でクラゲを飼育することが出来ると思いませんか?サカサクラゲはクラゲの中でも丈夫で、初心者の方でも安定して飼育することが出来ると言われています。
コロナウイルスの影響で外出できない今、自宅に癒しの空間を作ってみるのもいいでしょう。
<近藤 俊/サカナ研究所>