盲目の魚『ブラインドケーブ・カラシン』 人間の精神病との不思議な関係
2020年06月13日 16:30
抜粋
目が退化した魚「ブラインドケーブ・カラシン」。実は人間の精神疾患症状とよく似た行動をとることでも注目されているんです。
(アイキャッチ画像提供:アクアフォレスト)
ブラインドケーブ・カラシンとは?
目が皮膚で覆われて退化しているブラインドケーブ・カラシン。観賞魚として有名なネオンテトラと同じカラシン科に属している熱帯魚です。
原産地の中米では洞窟の中で生活しているため、魚体のメラニン色素が失われ白っぽい外見をしています。視覚の代わりに嗅覚や側線といった別の感覚器官が発達しており、周囲の様子を察知しながら泳ぐことができます。
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成魚で8cmほどになり、イトミミズや人工エサも食べることから家庭でも気軽に飼育することができ、日本でも鑑賞魚として販売されています。本来洞窟に住む魚ですが、光がある環境でも飼育することができます。しかし、その見た目が災いしているのか、ペットとしてはあまり人気がないとのこと。
少し不気味な見た目をしていますが、どことなく神秘的な魅力を感じてしまうのは筆者だけでしょうか・・。
目が退化した理由
人間には考えられない進化を遂げたブラインドケーブ・カラシン。目が退化した理由は2つあると考えられています。
1、省エネルギー化
ブラインドケーブ・カラシンが生息しているのはエサが手に入りにくい洞窟内。そのため、エネルギー消費を最小限に抑えるために目が退化したと考えられています。ある研究によると目を退化させることで、15%ほどのエネルギーカットを実現しているそうです。(参照:『NATIONAL GEOGRAPHIC』)
2、捕食される脅威が少ない
先述の通り、洞窟内は食料も乏しく、特に肉食の中~大型の魚は非常に住みにくい環境です。そのためブラインドケーブ・カラシンの分布環境には上位捕食者が生息しておらず、視覚から危険を察知する必要性があまり高くありません。つまり、目を退化させてもエサを見つけることさえできれば何とか生きることができます。
そもそも洞窟内の光がない環境下では目から入る情報量も少なく、生きていく上で視覚情報の重要度は高くないですよね。不要な視覚情報を切り捨てて生存率を上げてきた、ある意味合理的な魚なのかもしれません。
人間の精神病治療に役立つ?
そんなブラインドケーブ・カラシンがヒトの精神病治療の研究に用いられているそうです。人間と盲目の魚の間にどのような関係があるのでしょうか。
精神疾患症状と似た行動をとる
ブラインドケーブ・カラシンには「ほぼ不眠」「単純行動をとる」「急に活動的になる」といった、人間でいうと統合失調症や自閉症と類似した行動が見られます。
また、人間の精神疾患の危険因子遺伝子のほとんどがブラインドケーブ・カラシンにも見られるそうです。つまり、精神疾患の症状と同じような行動をするこの魚を研究することで、精神病の遺伝的な関係性や新たな治療法が見えてくる可能性があるということです。
実際にブラインドケーブ・カラシンに抗うつ剤を与えると攻撃性が上がるなど、ヒトと同じような反応を示したそうです。(参照:『Science』)
なぜ人間と同様の反応を示すのか、具体的な理由は未だ明らかになっていないとのこと。長い時間を要する研究かもしれませんが、将来的に人間にも役立つ可能性を秘めているという点も、興味を惹かれてしまう大きな要因なのかもしれません。
取材協力:アクアフォレスト
<田口/TSURINEWS編集部>