Dr.近藤惣一郎フィッシングクリニック:電動リールで「銭洲カンパチ」攻略
2020年07月30日 17:00
抜粋
問診票
大物釣りに使用される「電動リール」。手巻きリールとの違い、使用方法について教えてください。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・近藤惣一郎)


診断結果
電動リールのメリットはパワーだけではありません。私自身も楽をするためだけに電動リールを使用しているわけではないのです。利点をしっかりと理解することで、釣果へつなげていきましょう。
処方箋
電動リールで大物を狙うのは、楽をするためではなくヒット率を上げ、ヒットした貴重な魚を逃す確率を抑え、確実に仕留めるためなのです。大物の聖地「銭洲」でのカンパチ釣行レポートと併せて、電動リールの使用方法とコツを解説します。
手巻きと電動リールの違い
大物釣りのベテランアングラーが手巻きの両軸リール、とくにレバードラグリールを好んで使用する理由は、「最大ドラグ力の高さや優れたドラグ調整能」、「スプールフリーでの快適な回転性能」、「軽量で機動性が良く負担無く手持ちスタンディングの釣りが一日中あたりまえに行えること」、などが挙げられます。
裏を返せば、これらの点でかつて電動リールは手巻きリールに比べ劣っていたわけです。また大物釣り師は、魚との一対一の真剣勝負を釣りのテーマにしている方が多いです。電動の力を使わず、自分の力でヒットした魚を釣りあげたいという精神的名部分も手巻きリールを使用する理由です。
進化を続ける電動リール
1977年、モーター外付けの初代電動リール「ジャイロパワー」が誕生しました。それからおよそ20年後の1998年、防水性を実現したモーター前置き・FFシステムの小型電動リールが登場。そして2000年以降、モータの磁力アップで電動リールのパワーアップと軽量コンパクト化は段階的に進んで行きました。
また、これらと共に電動リールのドラグ性能やフリーでのスプール回転能も飛躍的に向上しています。また PEラインの強度、耐久性の進化でラインが細くなり、小さめのスプールでも糸巻き量がアップして、小型電動リールの実用性がより高まりました。
2017年に登場し、相模湾のコマセキハダ・カツオ釣りに挑む多くの釣り人に愛用されているシーボーグ800MJは、最大巻上力は約680kg、巻上げスピードは最速で150m/分とまさに驚異的な数値を実現した夢のような電動リールです。
シーボーグ800MJ(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)他メーカーのものも含め、これらハイパワー電動リールを使用して、近年、多くの釣り人が20kg、30kg級といったキハダを釣りあげています。では 電動リールはパワーがあるだけがメリットなのでしょうか。釣り初心者でもなく、体力もある私が電動リールで大物を狙い、仕留め続けるには、楽をするためではないのです。それはヒット率を上げ、一旦ヒットした貴重な魚を逃す確率を抑え、確実に仕留めるためなのです。
無限の可能性を秘める「銭洲」
2020年6月30日、銭洲のカンパチ釣行。今回は大物泳がせ釣りで電動リールを用いるメリットと留意点を踏まえながら、当日の様子をお伝えします。
この日私自身、コロナ自粛開け後、今期3度目の銭洲チャレンジ。新型コロナウイルスの医学的・社会的問題もあり、今期それまでの銭洲の状況は「前日良くても次の日さっぱり」といった具合に、潮の状況が落ちつかず、その日行ってみないとわからないような潮況が続いていました。
銭洲(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)私も過去2度の釣行日は 潮が悪く船中カンパチ1本と0本。何れも勝負自体させてもらえない状況でした。この日も梅雨前線が活発化して本州は大雨の予想、前日の釣果もカンパチは船中1本のみで苦戦は覚悟。
それでも 無限の可能性がある銭洲に大物釣り師は挑み続けます。我々釣り人は 自然を受け入れ与えられた条件の中で、船長を信じベストを尽くす他ないのです。
とびしま丸はコロナ対策も万全
お世話になったのはカンパチ丸として知られる西伊豆・土肥港、とびしま丸。乗船前の体温測定、かぜ症状の有無、行動歴申告、手荷物消毒、口腔内消毒、キャビン内マスク着用義務といった入念なコロナ対策を行う鈴木忠文船長の第11とび島丸は、この日も私を含め11人のチャレンジャーを乗せ午前2時頃出港。
途中神津島で漁師が釣り上げたアカイカを搭載して午前7時前に銭洲海域に到着。天候は曇りで、波も穏やかな凪の海。私の釣り座は左舷ミヨシ。
エサとタックル
通常なら餌のムロアジ釣りからスタートですが、この日は各自の生け簀に事前に希望した数の立派なアカイカが配られ、早速本命カンパチ狙い。ハリス50号親孫針仕掛けで投入。
餌のアカイカ(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)当日のタックルは下図の通りです。
タックル図(作図:WEBライター・近藤 惣一郎)タナ取りのテクニック
最初のポイントは水深が70mほど。「魚は居るね、潮が速いからマメに底取りして底から3~5mでタナをとって」と船長のアナウンス。マメに底をとるとは言っても、潮が速い時は道糸が潮の抵抗を受け傾き、無考慮に糸を出すとあっという間に他者とのオマツリを招きます。
コツは底から3~5m上を狙うとしても、錘着後、いきなりリーリングで巻き上げてタナ取りするのではなく、着底後、速潮と船の動きで自然に浮き上がる仕掛けの動きを利用すること。巻き上げリーリングは状況を見て臨機応変に加えたり加えなかったりして、タナ探ることが、速潮でのテクニック。
電動リールなら電動微速巻き上げができ、その分アタリに集中できます。こうすることで仕掛けの浮き上がりすぎや、逆にその状態から錘を再着底する時に出る無駄な糸フケを抑えることが出来るのです。また貴重なアカイカを弱らせないことにもつながります。
他の釣り人がヒットしたらチャンス!
開始10分、隣の釣り人のロッドが撓る。手巻きのナイスファイトで揚がったのは立派なカンパチ8kg級。この日の銭洲は過去2度とは全く違う状況。「反応バリバリ!」という船長のアナウンスで仕掛けを投入すると船中次々サオが突っ込みます。午前8時過ぎ、反対舷のミヨシと胴の釣り人にヒット。
他の人にヒットしているときは良い群れにあたっている証拠。そのタイミングに餌を落とし込むとヒットする確率は高くなります。仕掛けを一旦10m程巻き上げて落とし込み、錘が着底してまもなく私のマッドバイパーに震えるような前アタリ。
アタリからフッキング
大きなアカイカ餌の場合、特に早合わせは禁物。そのままラインテンションを保ちつつ、竿尻を腸骨に当て、左手はバットに添えてファイティングポジションをとります。
やり取りのスタンディングフォーム(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)数十秒後フッキングがなされロッドがグンと引き込まれ、この瞬間にバットを握る腕でしっかりロッドを支え、全身で魚の引き込みを受けとめ、のされないようにすることが重要です。そしてそのこと自体が確実なフッキングを実現します。
やり取り:細かなドラグと巻上速度の調整
水深が浅い銭洲ではドラグは締め込み、太ハリスでのガチンコ勝負が基本です。弱気になり糸を出しすぎれば根に入られることも多くなります。ただし強引な巻き上げでは口切れのバラシもあります。
強烈な引き込み(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)バイパーの曲がりと全身に伝えられる生命エネルギーは10kg以上の良型の予感。10m程糸が出たところでファーストランは止まりました。ドラグを更に締め、しばらく耐え頭をこちらに向けます。
シーボーグ800MJのパワーレバーで中速巻き程度の負荷を加えて行くと、少しずつラインが巻き上げられて、攻守交代のタイミングが訪れます。残り50mラインくらいになると根掛かりのリスクも少なくなるので、すこしドラグを緩めつつ、サオ先は目線の高さに合わせ、ポンピングは行わず電動パワーでスピーディーに引き寄せる。途中幾度もロッドを撓らせる強烈なファイトを披露し数分後大タモに収まったのは11.3kgの良型カンパチ。
カンパチをゲット!(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)電動リールのメリット
このやりとりで示すように、電動リールの一番のメリットは巻き上げ最中、最適なドラグ設定のもと、電動巻き上げを一定の速度で行っていれば、魚が引いたときは糸が出て、逆に魚が引かないときは引き寄せ、ラインシステムにかかるテンションが一定に保たれることなのです。
一旦針掛かりした魚をやりとりの最中逃すのは、魚が抵抗して(引いて)いるのに強引にリールを巻き上げることでラインシステムに大きな負荷をかけてハリス切れや口切れを招くことや、魚が浮き上がったり、こちらに向かって泳いでくる際に糸フケが出来、ラインテンションが減じることで針が外れてしまうケースが多いのです。
特に大物釣りを手巻きで行う場合は、一旦下に向けたサオ先を頭上まで上げて魚を浮かせ、サオ先を再び下げるときに、道糸をリーリングしてゆくいわゆるポンピングという行為で、魚を引き寄せる必要がありますが、このポンピング中にラインテンションが変化して魚をばらすリスクが高まるのです。勿論、百戦錬磨のベテラン達は、大物相手でもそれをこなせるのですが、経験が浅い釣り人や、体力・筋力の弱い人達には、これは容易なことでは無いのです。
ハイパワー電動リールならポンピング不要
裏を返せば、ハイパワー電動リールを用いていれば、大物とのやりとりでも、ポンピングは不要です。サオ先を上げすぎず、水平(から気持ち上)にサオ先を構え、ロッドの弾力が上手く発揮されるポジションで静止して、同一テンションで巻き上げ、魚を寄せてきます。この釣法はポンピングに比べ、見た目の派手さはありませんが、とても堅実な釣法です。ポンピングのように魚を強引に引き寄せないので、魚にもストレスがかからず、暴れにくくなります。
そして、魚を暴れさせないことは大物釣りで問題になるサメのアタックも減らすことにつながると考えます。経験的に派手なポンピングで引き寄せたり、強引なやりとりで魚を暴れさせることでサメへのアピール度が増してしまう傾向があるからです。実際この日も他の釣り人が掛けたカンパチの何匹かはサメの攻撃を受けていました。
当日のカンパチ最終釣果!
この日は餌のアカイカが十分な数用意できたことも運が良かったと思います。船長が群れを探索し続けると納竿までコンスタントに船中カンパチのヒットは続きました。
餌を釣る時間や労力が無く、釣りに集中でき、私はこの後も8.7kg、11.6kg、10.7kgのカンパチを追加して計4本。船全体では22本。釣れるカンパチは総じて型が良く、大物の聖地・銭洲のポテンシャルを改めて実感する最高の一日になりました。
ただし、終盤、今までのものとは桁違いの強烈なアタリが出て、90mラインで止めることは出来たものの、強引なやりとりでリーダーが切れて逃した一匹は悔やまれました。また次回チャレンジです。
船中の釣果(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)自分を信じ挑み続ける
銭洲で釣り人が釣り上げる魚、その一匹一匹は銭洲を信じ、船長を信じ、自分自身を信じ、挑み続ける者のみに与えられる価値ある一匹です。ネバーギブアップ!
自分を信じる(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)諦めず挑み続ける…その先に更なる大物との出逢いが待っているのです。
人を信じる(提供:WEBライター・近藤 惣一郎)<近藤惣一郎/TSURINEWS・WEBライター>















