サカナ界でもウイルス蔓延が問題に 霞ヶ浦で養殖鯉が大量死したことも

2020年02月07日 17:00

[TSURINEWS]

抜粋

世界中で感染が拡大している新型コロナウイルス。一刻も早い根本的な解決が求めれています。一方、サカナの世界でも同じようにウイルスが存在します。日本でも以前に、感染が拡大して問題になったことがあります。今回はサカナ界のウイルスについて、その主な事例についてご紹介します。

(アイキャッチ画像提供:Pixabay)

サカナ界でもウイルス蔓延が問題に 霞ヶ浦で養殖鯉が大量死したことも

新型のコロナウイルスが蔓延中

いま、世界中で猛威を振るっている『新型コロナウイルス』。

感染者は全世界で1万2千人を超え、死者も多数出ており、一刻も早い治療法の確立が求められています。

実はサカナの世界でも、コロナウイルスと同じように、ウイルスが広がり、特定の種類のサカナがその脅威から絶滅寸前まで追い込まれる事例が存在しています。

今回は魚の世界で怒ったパンデミックについてご紹介していきます。

サカナの世界にもウイルスが存在する

私たちの生活でウイルスといってよく聞くのはインフルエンザやノロウイルスなどが有名ですが、実はサカナの世界にも同じようにウイルスが存在しています。

魚類に感染して特異的な症状をおこすウイルスのことを一般的に【魚類ウイルス】と呼び、それらによって発症する魚病を、ウイルス性魚病または魚類のウイルス感染症と言います。

サカナ界でもウイルス蔓延が問題に 霞ヶ浦で養殖鯉が大量死したこともサカナの世界にもウイルスが(出典:PhotoAC)

主な魚類ウイルス

現在、主な魚類ウイルスは16種以上が知られており、病名をご紹介していきます。

伝染性造血器壊死症ウイルス
出血性敗血症ウイルス
伝染性膵臓壊死症ウイルス
サケ科魚類のヘルペスウイルス
赤血球壊死症ウイルス
赤血球封入体症候群ウイルス
旋回病ウイルス
ブリの膵肝壊死症(腹水症)ウイルス
リンホシスチス病ウイルス
マダイのイリドウイルス
ヒラメのラブドウイルス
ヒラメの表皮増生症ウイルス
神経性壊死症ウイルス
コイの上皮腫ウイルス
コイの春ウイルス症ウイルス
ウナギの鰓鬱血症ウイルス

養殖業者にとってはこれらのウイルスは、非常に大きな問題であり、今現在も様々な機関が研究を行なっています。

有名な魚類のウイルスを紹介

有名な魚類ウィルスに、コイヘルペスや金魚ヘルペスと呼ばれるヘルペスウィルスがあります。

ヘルペスウイルスは、DNAウイルスの一種で、私たち人間に例えると、水疱瘡(みずぼうそう)や突発性発疹、口内炎、リンパ腫などがその仲間です。

人間だけではなく、多くの動物には固有のヘルペスウイルスがあり、腫瘍(しゅよう)を起こしてしまうものも多く存在します。例えば、サケに腫瘍を起こすものやキンギョに造血障害を起こすものなどがあります。

これらのウイルスは非常に感染力が強く、養殖業界では常に頭を悩ませる原因となっています。というのも、感染個体の未治療の場合のキンギョの場合だと、致死率は驚異の90%以上、コイの場合だとほぼ100%だと言われています。

そして、このウイルスは非常に感染力が強く、100匹以上飼育している水槽に1匹の感染魚を入れただけで全個体感染し1匹の感染魚(キャリア)以外全滅させてしまうほどの猛威を振るいます。

いまだに有効なワクチンも開発されておらず、予防として水温を調節することで不活性化させる方法しか有効な手立てが見つかっていません。

コイヘルペス流行で壊滅的被害

2003年10月、霞ヶ浦の養殖鯉が大量死する事件が発生しました。各メディアでも大々的に取り上げられた事件です。

水産試験場での検査結果のよると、この原因がコイヘルペスウイルスによるものだと判明しました。そして発生から1ヶ月後の11月には、茨城県は持続的養殖生産確保法にもとづいてコイの移動禁止命令を発表しました。

ウイルスに対するワクチンもなく、そのほかの具体的な解決策もなかったため、広大な湖に拡散したウイルス駆除は不可能であると判断した養殖鯉業者は感染拡大を防ぐためにすべての養殖鯉を処分することにしました。

それにより、養殖業者は事実上の廃業状態となってしまいました。

外来魚の対策に

一方、2016年にオーストラリア政府は、この驚異の致死率を持つコイヘルペスウイルスを使って、外来魚の駆除をするという政策を打ち出しました。

オーストラリアでは、コイは「オーストラリア最悪の淡水有害生物」と呼ばれており、コイが繁殖することで、固有種が絶滅してしまった事実もあります。

そのため、政府はコイが繁殖した川にヘルペスウイルスを散布し、外来魚であるコイを根絶させようと考えたのです。ただ、その後の処理や、水質汚染が懸念されており、この計画は今のところ実行されていないようです。

コイヘルペス対策の一環で放流規制

意外と知られてはいませんが、コイもブラックバスやブルーギルをはじめとした外来種同様に、都道府県によっては他水域への放流が禁じられています。

これは、霞ヶ浦のコイヘルペス病の発生に伴い、蔓延防止の対策として放流規制が設けられているためです。

例えば、茨城県霞ヶ浦北浦では、コイの他水域への移動(移動・放流・投棄)、または飼育が禁止されています。(参照:釣りのルールとマナー/茨城県:http://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/kasui/contents/ruleandmanner.html)

滋賀県琵琶湖でも同様に、他水域に生死を問わず、コイの遺棄が禁じられています。(参照:水産動物の移植の禁止/滋賀県ホームページ:https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/shigotosangyou/suisan/18700.html)

人間の世界では、今現在、コロナウイルスが世界中で蔓延し、生命を脅かす存在となっていますが、サカナ界でもコイヘルペスなど全国的に対策が取られているものも存在します。

他にも、各都道府県によってコイヘルペスをはじめとした魚類ウイルスの対策が取られています。コイの安易な他水域への放流は規則で禁じられていますが、どんなサカナであっても安易に放流することは控えましょう。

<近藤 俊/サカナ研究所>

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