「カレイ」があまり養殖されない理由 成長速度と価格イメージがネック?
2021年01月11日 11:00
抜粋
日本人にとって馴染み深い食用魚であるヒラメとカレイ。実は、ヒラメは全国的に養殖が盛んなのですがカレイの養殖物はマイナーです。なぜこの違いがあるのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)


カレイの養殖はマイナー
古くから日本人に愛され、知名度も高いヒラメとカレイ。いずれもカレイ目に属し互いによく似ており、「左ヒラメに右カレイ」といった見分け方も耳馴染みがあると思います。しかし、漁業的な観点から見ると大きく異なっている部分があるのです。
まず、ヒラメは盛んに養殖が行われています。ピーク時からは減少しているものの、今日でも年間6000t以上生産されており、隣国韓国や中国で養殖された個体の輸入も多くなっています。稚魚を放流して自然環境下で成魚になるのを待つ「栽培漁業」も盛んに行われています。
その一方で、カレイはヒラメのように「盛んに養殖されている」とは言えない状況にあります。稚魚の放流は各地で行われているものの、それは漁獲するためと言うよりむしろ「釣魚」としての需要を満たす目的として行われている事が多いようです。
なぜ、このような違いが出るのでしょうか。
ヒラメとカレイの食性の違い
ヒラメとカレイはとても良く似ていますが、「食性」という点に注目すれば異なる点が多いです。それはヒラメ科の代表である「ヒラメ」と、カレイ科の代表種である「マコガレイ」を見比べてみるとすぐに分かります。
ヒラメの口は、大きく裂けて牙が目立ちます。
ヒラメの口(提供:PhotoAC)これに対し、マコガレイの口はおちょぼ口で牙がありません。
マコガレイの口(提供:PhotoAC)この口からも分かる通り、ヒラメは獰猛なフィッシュイーターで、魚やイカなどを盛んに捕食します。一方でマコガレイの主食は底生小生物で、大きくなるまでは魚を捕食することはあまりありません。
ヒラメほど養殖に向かないカレイ
この食性は成長速度にも関係するとされており、ヒラメは3年ほどで40cm程度に成長する一方で、マコガレイは環境による変異が大きいものの、同期間で20cmほどにしかならないと言われています。(『わが国の水産業 ひらめ・かれい』社団法人日本水産資源保護協会 1990.3)(『カレイのすべて』週間釣りサンデー 1981.11)
この成長速度の差が、そのまま養殖採算性の高さ・低さにもつながるのです。
また、刺身や寿司ネタとして高い需要があり、高級魚のイメージが強いヒラメと比べると、カレイは唐揚げ・煮付け用の安い惣菜魚としてのイメージが強く、高値をつけにくいという理由もあります。このこともまた、養殖が盛んではない大きな理由のひとつと言えるでしょう。
養殖されるカレイたち
このように「成長が遅い」「魚価が低い」ために養殖が盛んでないカレイですが、逆に考えればこれらのデメリットがなければ養殖が可能になるとも言えます。そして実際に、ハードルをクリアして養殖を行っているところもあります。
例えば青森県中泊町では、「マツカワガレイ」という高級カレイの養殖を行っています。マツカワガレイには「緑色の光を当てることで食欲が増す」という研究結果があるそうで、この技術で成長速度を早め、出荷までの飼育期間を短くすることで生産性を上げることが可能になるそうです。(『カレイ養殖で新たな試み/小泊漁協(中泊)』陸奥新報 2020.5.19)
生食用の活け締めものが流通するホシガレイ(提供:PhotoAC)また、発電所から出る温排水で促成栽培を行う例も各地で行われています。東日本大震災で頓挫してしまいましたが、かつては福島第一原子力発電所の温排水を利用し、高級カレイであるホシガレイの養殖が行われていました。(『
高級カレイの養殖に成功 福島第一で温排水利用して』原子力産業新聞 2004.1.15)
近年、流通の発達により、カレイも生食用鮮魚での需要が増え、魚価が向上しています。様々な技術の発展により、今後「養殖カレイ」もポピュラーな存在になっていくかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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