クロ不在の『沈黙の沖磯』で五目釣り 想定外のサワラフィーバー【宮崎】
2020年02月12日 17:00
抜粋
年を越すとメジナ(クロ)の声が聞こえてくる。 寒グロの声だ。メジナは年中釣れる魚ではあるが、寒グロは型もさることながら、何といってもその食味の良さにある。クロ師達が待ちに待った季節の到来だ。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・楢﨑 人生)


メジナが釣れない冬
例年なら寒グロの釣果が飛び交うシーズンに突入しているが、今年はまだクロが釣れているという情報が入ってこない。お隣の大分県では釣れているようだが、宮崎県ではコッパや手のひらですら釣果が聞こえてこない。
熱烈なクロ師である父は業を煮やしていたが、ある日突然「釣れなくてもいいからクロ釣りに行く。釣行日は1月30日。お前も準備しておけ」と宣言。そこで私は「クロが釣れないならヒラスズキでも釣ろう」という軽い気持ちで同行する事にした。
小場島に渡礁
釣り場は、宮崎県日南市の油津港から船で数十分程の沖磯。今回お世話になったのは一八宏丸(いちはちひろまる)さん。海が荒れて10日も船が出せなかったので当日の状況はまるで予測出来ないと言う。
当日もうねりで船が上下に揺さぶられた。それでも船に乗り込んだ8人の男達は期待に胸を膨らませて会話も弾む。
期待に満ちた船内(提供:WEBライター・楢﨑 人生)陽が昇り、島が見えてきた。決戦の時だ。私と父が上がった島は七つ岩の南にある小場島(おばじま)の北端付近、通称チョウチン。
ヘラブナ釣りの7割以上をチョウチン釣りに費やす私にはうってつけの名称だ。後で聞いた話だが、ここはクロだけでなくイシダイの好ポイントでもあり、実際にピトンの跡が多く見られた。
陽が昇り島が見えてくる(提供:WEBライター・楢﨑 人生)クロ釣りには最悪の状況
竿を出す準備にいそしんでいる間に辺りが明るくなってきた。海面を一瞥した父親が「この潮ではクロは釣れない」とつぶやく。確かに海は普段とはまるで違う。どこか遠い国の海の様な緑色をしている。
見たこともない緑色の海(提供:WEBライター・楢﨑 人生)本来なら青く澄んでいかにも釣れそうなサラシが巻いているはずだ。さらに厄介な事に潮の流れが複雑怪奇で、コマセを撒く度に流れが変化して四方八方に散らばってしまい、魚を寄せる事が出来ない。仕掛けを打つとウキは毎回異なる方向へ流されていく。
さらに我々の心にとどめを刺したのは足元にコマセを打っても何の魚も寄らなかった事だ。これには流石に閉口した。「やる前に負ける事を考えるバカがいるかよ!」賽は投げられている。釣れそうにないからといって竿を出さない訳にはいかない。
沈黙の沖磯
釣り方はアミのフカセ釣り。開始早々にふわふわとウキが引き込まれ小さなイスズミが釣れた。吉兆である。クロとイスズミは生活圏がかぶっているのか、イスズミがいるとクロも釣れる可能性があるという有難いゲスト様なのだ。
吉兆の外道イズスミ(提供:WEBライター・楢﨑 人生)しかし後が続かない。沖まで流して仕掛けを回収してもハリにアミがそのまま付いてくる。相変わらずエサ取りの姿さえも見えず、釣り人がスティーヴン・セガールならば『沈黙の沖磯』という映画が出来そうだ。
寒ボラやカサゴもヒット
絶望的な状況の中、クロ以外はボラやカサゴがぽつぽつと釣れる。京浜運河で釣れるボラは食べると生命の危険を感じるだろうが、ここは夏目漱石に『猿と人が半々くらいの割合』と言わしめた田舎・宮崎。それも沖磯だ。寒ボラも刺身で食べる事ができるので、母も喜ぶだろう。
綺麗な寒ボラ(提供:WEBライター・楢﨑 人生)イシダイの気配後は、年無クロダイ!
カサゴが釣れてくるなら仕掛けを流している範囲はあまり深くない。水深は竿1本半程度だろう。エサは底付近を漂ってる。それを裏付けるかのように、父はイシダイと思しき魚を2度掛け、2度とも切られている。
ヘダイやチヌ(クロダイ)も混ざり、特にチヌは51cm・2.3kgという良型。悪条件下で五目釣りを達成出来た。ただ大本命のクロは1匹も釣れないままだ。
年無しチヌも(提供:WEBライター・楢﨑 人生)ルアーフィッシングに変更もアタリなし
釣れる魚はコマセで寄った魚ではなく偶発的な魚である事と、肝心のクロが釣れない事からルアーに変更。しかし残念ながらヒラスズキが狙える地形でもポジションでもない。ヒラスズキは地形とサラシとルアーを引くポジションが命。念の為にルアーを引いてみるがやはり反応は無い。
再びクロ釣りに戻る。そうこうしていると時々ではあるが沖で小さなボイルが発生しているのに気付いた。ごく短時間でボイル自体も小さい。ルアー竿に持ち替えた時には既に終わっている規模のボイルだ。小型の青物が回遊している事を予想してルアーで沖を打ち続けるが芳しくない。
マッチザベイトでキビナゴをイメージしたルアーを投げていたが、思い切って派手なルアーであるビーチウォーカーアクシオンのラメピンにチェンジ。何となくの思い付きで投げると、1投目からミラクルを呼んだ。
ルアー変更でサワラフィーバー突入!
ルアーを変更して1投目。今までと同じコースを通してみるとガツガツという衝撃と同時に竿が曲がった。頭を振るような引きをしているが、案外するする寄ってくる。足元まで来てようやくドラグから糸が出るような突っ込みを見せた魚の正体は60cmを超えるサワラだ。
派手なピンクのルアーでサゴシ(提供:WEBライター・楢﨑 人生)磯に上げると小さなキビナゴを吐いている。やはりベイトはキビナゴで正解だったが、ルアーは色もサイズもまるで異なる。潮が澄んでいないので派手なカラーに反応したのかもしれない。それにしてもずっとキビナゴを吐いている。凄い量だ(サワラが吐いたキビナゴは全てイソヒヨドリが美味しくいただきました)。
さらに86cm堂々のサワラを釣り上げ
その後は2投連続ヒットなど、サワラフィーバーへ突入。86cm、2.9kgのサワラを上げたところで迎えの船が来て納竿。クロの顔は拝めなかったが様々な魚種が数多く釣れて、満足とも不満とも違う不思議な気持ちで港まで船に揺られていた。
86cmのサワラ浮上(提供:WEBライター・楢﨑 人生)8人全員がメジナ0匹!
戦いは終わった。港へ戻る船内。クロを釣った人はまさかの0人。玉砕である。クーラーからはみ出た大きなサワラの尾に話題が集まる。それ以外には語る話も無いほどの釣果だったのだ。
10日前までは40cmクラスのクロも釣れていたというので、海が荒れて潮が冷めた事で総員玉砕という結果になったのだろう。釣りに必勝法は無い。こんな日もある。船頭のブログで釣果を確認しながら状況が良ければ半月後にまたリベンジする事を誓い家路についた。
ボラの刺身が絶品
クロは釣れなかったものの釣果は十分だった。ご近所にサワラを配って回り、我が家でも海の恵みを堪能した。特にボラの刺身とサワラのフライは絶品だった。
ボラは個人的には刺身10傑に入るレベルだと思う。まだ食べた事の無い方は沖磯でボラが釣れたらその場で締めて持ち帰る事をオススメする。食膳を眺めながら、次回はメジナとヒラスズキを食卓に並べようと心に誓った。
ボラの刺身やサワラのフライが絶品(提供:WEBライター・楢﨑 人生)<楢崎人生/TSURINEWS・WEBライター>














