馬の尻尾から作る釣り糸『馬素(ばす)』 古代ローマ時代から存在?

2021年04月09日 06:00

[TSURINEWS]

抜粋

今回は古くから釣りイトの材料として利用されてきた「馬素(ばす)」やテンカラ釣りについて紹介したい。

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター片桐真流)

『馬素』について

【馬素/ばす】馬の尾の毛。釣り糸・織物などに用いる。

馬素とは馬の尻尾の毛のこと(提供:TSURINEWSライター片桐真流)

馬素(ばす)とは馬の「尻尾の毛」の呼び名であり、世界的には古代ローマ時代から釣り糸として使われてきた歴史がある。日本でも江戸時代に馬の尻尾を釣り糸として使った文献が存在している。

馬の尻毛の一本一本は細く弱いが、数本束ねて撚ることで重量が増し、強くしなやかになり、軽い毛バリを飛ばすには最適なライン素材となる。

馬素ラインの製作方法

その製作方法は、馬の尻尾を指の中でコロコロと転がすようにして撚り合わせていき、更に撚った馬素どうしを撚り合わせて1本の太い撚糸(ねんし)に仕上げていく。

撚りの末端を結んでひと節ずつ仕上げていくことで、撚り数を調整しながら各節をノット(結び)で連結しながらラインに「テーパー」をつけていく。

馬の尻尾を撚り合わせて作られた馬素(提供:TSURINEWSライター片桐真流)

自然素材ということもあり、水に濡れると癖が無くなり、毛バリを思いのポイントへキャスト可能となる。ナイロンラインにはない重量感と感覚が竿を持つ手にもしっかり伝わってくるのが特徴だ。

ラインが重いため、おつり(ラインが戻ってくること)が多くなるなどの難しさがあるが、テンカラ釣りの歴史を肌で感じられ、釣り師にとっては自在に使いこなせるようになる価値がある素材である。

ナイロン製の釣り糸が一般的に発売される前には、馬素は釣り用ラインとして主役の座にあったようだ。

『テンカラ』について

テンカラとは、渓流に棲むイワナやヤマメを「毛バリ(けばり)」で釣る方法のことで、釣りに必要な「六物:サオ、イト、ウキ、オモリ、ハリ、エサ」を限りなく削ぎ落した「サオ、イト、ハリ」の「三物」で構成されるシンプルな釣りである。

馬素と毛バリ(提供:TSURINEWSライター片桐真流)

テンカラという呼び名は今から40~50年前が始まりと言われているが、語源や発祥地など明確な詳細は今でも不明である。

諸説あるが、歴史上テンカラが初めて登場したのは秋田県で、その周辺地域の古い言葉で「テンカラ」と言えば「蝶々」のことで、毛バリを「ちょんちょん」と、蝶が水面に触れるように誘う様子が語源、という説もある(一説では、明治以前からテンカラと呼んで毛バリ釣りを楽しんでいた地域もあったようだ)。

逆さ毛バリとは?

毛バリの発祥は、ヨーロッパでは紀元前、日本でも同時期に鳥の羽を巻いて擬餌針を作るという発想があり、日本では海釣りに使われたのが最初とも云われている。

毛バリは鳥の羽(ハックル)の表面をフックのアイ側に向けて、羽が後ろになびく形になるように巻くのがスタンダードだが、ハックルの向きを敢えて逆にして、アイ側に開く形にしたのがテンカラ釣りで使用する「逆さ毛バリ」である。

水中で流れの抵抗を受けながら、フワフワと生命感のある漂いで魚にアピールをすることが出来る。

逆さ毛バリ(提供:TSURINEWSライター片桐真流)

フライフィッシングのマッチングザハッチ(ターゲットである魚が何を捕食しているかを見定めて、水生昆虫の成長時期やフィールド環境に合った毛バリで釣ること)の発想とは異なるプレゼンテーションだ。

渓流魚であるイワナは山深い場所(1500~3000m)の源流域に生息する魚で、その昔、専門に釣っていたのは、冬は熊撃ち猟、夏は渓流の職業漁師、「マタギ」である。山岳渓流においての毛バリは「秋田マタギ」が伝えたなどの諸説もあるが、「イワナ釣り」としての記録は元禄年間(1688-1704)まで遡れる。

山間に暮らす人々が貴重なタンパク源を得るために生活に必要であった「生きる知恵」、伝統的な釣りが「テンカラ」であると言えるだろう。シンプルで潔く、無駄のない「日本人らしい」釣りスタイルが、個人的には非常に魅力的で好感が持てる。

近年は熱心な普及者の努力のおかげで、海外でも「TENKARA」として人気があり、世界的にも認知度が高まっている。

テンカラのタックル構成

テンカラ釣りでは、フィールドの川幅に合わせて、源流部では3.0m、標準では3.3m、本流域では3.6~4.5m程の竿が使われる。

軽くて取り回しの良いものを(提供:TSURINEWSライター片桐真流)

キャスト回数も多いので、軽くて取り回しの良いものを選びたい。竿調子は6:4~7:3のやや胴調子寄りが主流である。

テンカララインの種類

釣り糸は大きく分けて3種類あり、先へ向かって細くなる糸(テーパーライン)と、均一な太さの糸(レベルライン)、新素材の糸(ストレートライン)が使用される。

テーパーラインは、ラインを数本撚り合わせたもので、フライラインのように先細りで毛バリに力を伝達する。木に引っ掛けて引っ張ったりした際に、撚りが緩んでしまう欠点がある。

レベルラインは、フロロカーボン単糸で、適度な重みで扱いやすく、現在のテンカララインの主流となっているが、巻きグセがつきやすい欠点がある。

ストレートラインは、新素材の糸を編み込んでコーティングした組糸で、普及率は低いが、巻きグセなどのトラブルも少ないことで認知されつつある新素材ラインである。

ラインの長さは竿の長さと同じにすることが多いが(竿尺)、遠方を狙う場合は竿より長くセッティングすることもある。

自作毛バリで魚の反応を楽しむ

また、フライフィッシングではリールを使用するが、テンカラ釣りではリールを使わずに「サオ、イト、ハリ」で魚にプレゼンテーションする。

テンカラは誘いの巧妙さで喰わせる釣りともいえ、毛バリの精巧さにはあまり拘らず「それらしい毛バリ」が自作出来れば釣果は十分であると思う。

渓流魚の視力は0.1程といわれており、「ヒト」は赤、緑、青を認識する「三色覚」であるが、渓流魚は紫外線を色と認識出来る「四色覚」であり、「側線」という体側の感覚レーダーで水圧の変化(毛バリの動き)を感知しているので、川虫っぽい大きさで、何らかの生物らしい要素が毛バリにあれば、魚は素直に反応してくれるだろう。

<片桐真流/TSURINEWSライター>

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