釣りの人気ターゲット『アオリイカ』のちょっと変わった生態
2021年10月30日 17:00
抜粋
秋イカエギングでのメインターゲットである「アオリイカ」。実は意外と知らない面白い生態を持っているようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
アオリイカ
アオリイカは「軟体動物門・頭足綱・閉眼目・ヤリイカ科・アオリイカ属」に属する生き物です。
軟体動物門のため、イカは魚類ではありません。
丸み帯びた胴体と大きなヒレが特徴で「イカの王様」とも呼ばれエギングのメインターゲットとして人気があります。
アオリイカは日本全域、国内の幅広い地域に生息しており、暖かい海を好む傾向がありますが、近年は海水温の上昇から北海道でも生息が確認されるようになりました。
国外では韓国やタイ、オーストラリア、ニュージーランドなど幅広いエリアに生息しているいます。
3種類のアオリイカ
日本に広く生息しているアオリイカには実は3パターンあります。
実は複数のタイプがあるイカで、区別せず「アオリイカ」と呼んでいますが、日本各地で釣れるスタンダードな白イカと、九州以南の深場に多い赤イカ、小ぶりなクワイカに分けられます。
中でも最も大型になる赤イカタイプだと5kgクラスにもなり「レッドモンスター」と呼ばれることもあります。
アオリイカも実は年魚?
冬に近づき気温が低下し表層の水温も低下すると、アオリイカは低層へと居場所を変えます。
さらに水温が低下するとアオリイカたちは水温の安定している深場へと移動し、陸地からの釣りではなかなか狙いづらい状況になります。
しかし、冬に釣れるアオリイカは大型の個体が多く、冬でもエギングをしている釣り人も少なくありません。
そして、また春になり成長したアオリイカが再び産卵の為、浅場へと移動し海藻などに卵を産み付けます。産卵は複数回行われ、一年が経ったアオリイカのほとんどが死んでしまいます。
同じようにアユなどのマスの仲間も一年サイクルで成長し、次の世代に生まれ変わっていきますが、これらのサカナたちは「年魚」と呼ばれるのに対しイカには特に呼び名はないようです。
アオリイカの泳ぎ方
アオリイカに限らずイカ類は漏斗(ろうと)と呼ばれる器官をもっていて、体の中に取り込んだ海水を漏斗から噴射することによって進みます。
ジェット噴射を想像してもらえるといいでしょう。
イカは場面に応じて泳ぎ方を変え、エサを襲いかかる時は足のある方向へエンペラを器用に動かして進み、外敵から逃げるときには胴の方向へジェット噴射を利用して進みます。
アオリイカは特にヒレが大きく、これを波打たせてスライドするように静かにエサに近づいたり、海藻の上あたりでホバリングしながらエサがくるのを待ち伏せしていたりするようです。
産卵時期はまばら
通常、一年サイクルで生まれ変わるアオリイカですが、産卵のピークは6月頃ではありますが、早い個体では4月から産卵し始め、遅いものでは9月頃に産卵をする個体もいます。
そうなると、早く産まれた個体は水温が高くてエサの豊富な時期と成長期が重なるため大きく育ちます。
逆に、遅く産まれた個体は水温の高い時期に十分なエサを取ることがでないため、十分に成長していないのに水温の低下によって深場に移動せざるを得ません。
そのため、エギングをしたことがある人には分かるかもしれませんが、同じ時期でもアオリイカの大きさに違いがあり、秋でも比較的大きな個体がいたり、春になっても小さいままの個体が混ざるのです。
同じ時期に生まれたイカの中で、たくさんエサを食べた個体だけが大きくなるのではなく、大きく育っているイカはそれだけ早く生まれたということなのです。
アオリイカの視力
アオリイカの目は人間が色として認識している「可視光線」を認識できず、白と黒の水墨画のような世界を見ていると言われています。
視力や視野の広さを考慮すると、生態の項目でご紹介した通り非常に高性能な目を持っていますが、赤や青を人間の目と同じように認識することはできないのです。
ですが、アオリイカにはアオリイカなりに濃淡でエギのカラーが見えているようで、エギングのカラーチェンジは非常に効果があります。
食べる前に触る
アオリイカの捕食行動は独特で、長い触腕を使ってエサを抱きかかえ、足で動きを止めてから付け根にあるクチバシのような口でかじります。興味を持ったものには上部後方から近づくこと、かじる位置はほとんどが首の付け根あたりである点も特徴です。
エギの頭下がりな姿勢は、このアオリイカの位置取りに対して、うまく針であるカンナ側から食わせるためです。
エサに興味を持った時に行う捕食の前動作も非常に特徴的で、長い触腕で対象をバシッと叩くような行動をとります。釣りの世界では通称「イカパンチ」と呼ばれている行動で、何度かパンチした後、食べられると判断すると抱きかかえる行動に移るケースが多いです。
エギングでは「イカパンチ」を掛けて腕一本で上がってきたり、待ちすぎて離されたエギがかじられていたり、この独特な捕食が釣り方に大きくかかわる重要な要素になっています。
生きているサカナが大好き
アオリイカの餌は甲殻類と小魚で、特にアジやイワシを好む傾向があります。
非常に目がよく動くものに興味を示す性質がありますが、冷凍のアジで釣れることもあり、わずかな揺れや匂いなども感知しながら、食べられるものを判別しているようです。
エギは人間の目から見ると魚よりもエビに見えますが、アオリイカが普段食べているエサの割合は圧倒的に小魚が多く、いかにエギを小魚のように見せて興味を持たせられるかがエギングのポイントになるでしょう。
小さいイカや海に優しく
秋の今の時期、エギングで簡単に釣ることが出来るアオリイカですが、食べないのであれば、優しくリリースしてあげましょう。なるべく海面に近い低い位置でハリを外してあげたり、水から出さずにハリを外してあげるなどです。
このちょっとしたイカへの気遣いが今後の釣果を大きく左右する可能性があることを忘れてはいけません。
また、ルアーであるエギをロストすると大きな魚が誤って食べてしまったり、微生物の分解できない海洋ゴミとなって海洋汚染にも繋がってしまいます。根掛かりした際はむやみやたらに引っ張るのではなく、適切な対応をしてなるべく海をきれいに保つようにしましょう。
釣り人として海を守ること、海の生き物を必要以上に傷つけないことが非常に大事です。
<近藤 俊/サカナ研究所>
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