ペア戦ならではの楽しさと緊張感!生天目弘次&山田剛弘ペア「2021がまかつチーム対抗戦 東日本大会」参戦記
2021年11月27日 11:30
抜粋
ペア戦ならではの楽しさと緊張感!生天目弘次&山田剛弘ペア「2021がまかつチーム対抗戦 東日本大会」参戦記
約2年に及んだコロナ禍による各種イベントの中断・・・。
そして今年、へら鮒釣り界イベント再開の皮切りとなったのが、2021年11月20日(土)の「2021がまかつチーム対抗戦 東日本大会」である。
参加募集開始からあっという間に定員に達してしまったことからも、へら師のみなさんがイベント再開を待ちに待っていたことが窺い知れよう。
また、この「チーム対抗戦」には他の個人戦にはないペア戦ならではの面白さがあることから、大人気のトーナメントとしてへら師の間に深く浸透している。
そこには、ただストイックに勝ちにこだわり勝負する醍醐味だけなく、普段から切磋琢磨している気のおけない友人と組み、一緒に作戦を立てて大会に臨むという、他の大会にはない楽しさがあるのだ。
そこに「この人と出たい!」という人間らしい想いのようなものも存在し、この大会をより味わい深いものにしているのである。
さて今回、参加者の中から「生天目弘次&山田剛弘ペア」をピックアップし、大会の楽しさをより多くの方に伝えるべく、お2人に密着させていただくこととなった。
「この人と出たい!」
生天目弘次(なばため・こうじ)さんは茨城県在住の50歳で、G杯を始めとする全国規模のビッグトーナメントで数多くの実績を持つトップトーナメンター。
がまかつフックモニターも務め、各種メディアでも活躍する腕達者であり、オリジナリティー溢れる繊細な釣技で定評がある。
そしてコンビを組む山田剛弘(やまだ・たかひろ)さんは生天目さんの1つ年上の51歳。
生天目さんの古くからの釣友であり、やはり腕利きのトップアングラー。
2015年、2017年にはG杯全国大会にも進出している。
しかしそんな山田さんだが、お仕事の関係でここ2年はへら鮒釣りから遠ざかり気味とのことで、今回の出場に際しても生天目さんに「ほとんど釣りができていないので、自分以外の人と組んで出たほうがいいのでは」と辞退の意を伝えていたのだという。
しかしそこで譲らなかったのが生天目さん。
「出るなら山田さん以外は考えられない」として、頑として山田さんの申し出に首を縦に振らなかったのだという。
生天目さんは言う。
「この大会の趣旨は、ただ単に勝つことだけではないと思うんですよね。チーム戦ですから。僕は出場するなら山田さん以外には考えられなかったんです。ずっと一緒に練習してきた仲間ですから。正直、結果はどうでもいいんですよ。ただ、出るからには全力で勝ちに行きますけどね!」
そんな生天目さんの想いを汲み取り、山田さんは大会直前にどうにか日程をこじ開け試釣を敢行。
その腕前は錆びつくどころか生天目さんも驚く冴えを見せ、試釣時の椎の木湖では池全体でトップ5に入る釣果を叩き出していたというから驚きだ。
「この人と出たい!」
そんな生天目さんの熱い想いに応えて奇跡の復活を果たした山田さん。
もちろん生天目さんもここ最近の椎の木湖では絶好調で、俄然、優勝候補に名乗りを上げてきた。
前回大会のリベンジ!メーターウドンセットで勝負
大会前、それぞれ2人に話を聞いた。
まずは生天目さん。
「実は前回大会(2019年)の前半終了時点で、我々はトップだったんですよ。これはいけるぞ、と。でも、そこから僕が後半失速し、10位まで落ちてしまったんです。だから今回こそは自分がチームを引っ張って、山田さんに恩返しをしたいんです」
「僕はどちらかといえば両ダンゴが得意なんで、いつも両ダンゴをやっちゃうんですよね。でも冷静に考えたら、この時期の椎の木湖の大会ではさすがに無理がある(苦笑)。そこで今回はもう両ダンゴは完全に捨て、セット釣り一本に絞ります」
「次にタナですが、チョーチンも釣れなくはないんですが、トータル的にはメーターに分があるように感じました。それも、やや長めのほうが素直にアタリをもらえる感じです。山田さんと試釣した時もそうでした」
「狙い方に関しては、基本的には冬の釣りで、バラケも『抜き』を意識した方向性ですね。夏場のようにガッチリ持たせてしまうとアタリをもらえない感じです。朝はバラケの重さを少しだけトップに掛けるような『ちょい掛け』から入って様子を探っていこうと思っていますが、かなり渋ると思いますので、おそらくゼロナジミの方向にいくと予想しています。仕掛けもライト系ですね」
「ただハリスと鈎に関してはちょっと試釣で分かったことがあるんですよ。何かというと、下ハリスは50~55㎝と長めにしておいて、そのぶん、重めの鈎でハリスを適度に張らせておくといい感じで早いタイミングのアタリがもらえるんです。当日は『クワセマスター』2号と、さらに重い『ギガボトム』の2号の使い分けでいこうかなと思っています」
どうやら試釣を通してかなりの手応えをつかんでいる様子の生天目さん。
それはペアの山田さんも同じようだ。
「生天目さんが言うように重めの鈎がキーのような気がしていて、自分は『クワセマスター』の3号から入るつもりです。あと自分は生天目さんより最初から抜きを意識した感じで入ろうと思っていますが、その分、下ハリスは短め。冬を意識したゼロナジミの釣りでテンポよく打って、ハリスの張り際のアタリを狙っていきます。久しぶりの大会なので、早めに1枚目を釣って落ち着きたいですよね」
両者ともに釣り方はメーターウドンセットで、バラケは「抜き」傾向の釣り。
そして共通するのは「重めの下鈎で適度にハリスを張らせて、倒れ込むまでに仕留める」という狙い・・・。
息の合った2人は自然と共通意識を持ち、万全の態勢で本番に臨んだ。
最高の座席。しかし、予想以上の食い渋りが襲う!
大会当日はこの日一番の冷え込みとなり、寒い朝となった。
会場に現れた2人はさっそく受付と釣り座抽選へ。
そこで「事件」が起こる。
「やりました。今日の運を全て使い果たしましたよ(笑)」
2人が引いた座席番号は「438番(3号桟橋ブルーエリア)」と
「229番(2号桟橋レッドエリア)」。
そして何と、生天目さんが入ることとなった438番座席は3号桟橋渡り先のヘチ!
全選手が狙う最高の釣り座となったのだ。
山田さんが入ることとなった229番釣り座は2号桟橋渡り手前工場向きで、ここも悪くないエリア。
つまり今回、2人は完全に「当たり」を引いたわけである。
「よし、やりますよ!」
気合の入る生天目さんを暖かく見つめる山田さん。
これはいい流れが来ているか!?
しかし・・・。
2年以上ぶりとなったビッグトーナメント開催に椎の木湖の大型たちも驚き、浮き足立ったのか、予想以上の状況が選手たちを襲うこととなる。
7時30分、競技スタート。
コロナ対策を鑑み、開会式は全選手が釣り座に着いた状態で放送により簡潔に行われ、また、ソーシャルディスタンスの観点から1席空けの贅沢な釣り座が用意された。
さらに従来の前半&後半の二部制を取り止め、トータルの競技時間も従来より短縮して5時間一本勝負とすることで、極力選手達の釣り座移動を行わない工夫がなされた。
がまかつ流「アフターコロナ」時代トーナメントの新提案だ。
しかし、大勢の参加者が一斉に入場し、一斉にエサ打ちを開始するトーナメント独特のフィッシングプレッシャーは想像以上だったのか、開始直後、数分立っても竿を絞る姿は見られず。
実は大会前の選手たちからは、1席空けの釣り座ということでスタート前は「序盤からアタリが多いのではないか」という楽観論もささやかれていたのだが、蓋を開けてみれば全くの逆の展開が待ち受けていた。
激渋である。
「全然アタらないですね。気配はあるんですがアタリにならないです」
試釣どおりの「がまへら 千早」10尺、メーターウドンセットで入った山田選手。
1枚目を獲ったのは予想より遥かに遅い開始40分後の8時10分で、その後も煮え切らないウキの動きが続く。
バラケは冬仕様の完全ゼロナジミになっているが、それでも、なかなか食いアタリまで持ち込めない。
しかしそれは周囲も同じことで、全神経をウキに集中し、またバラケもちょい持たせから完全ゼロ、そしてバラケのサイズ自体も微妙に変化させながら、取りこぼしのないようウキを凝視する。
さて、「最高のポイント」に入った生天目選手は、「この場所なら竿は長くなくていい」と、「がまへら 千早」8尺をチョイスして取り回しを重視。
やはり山田さん同様、バラケは「ちょい掛け」から「ゼロナジミ」までを試していくが、なかなかアタリをもらえない。
この日は大会ということで渡り桟橋にスタッフや報道陣の往来も頻繁で、その点も「場所の割に思ったよりアタらない」ということにつながっているのか。
8時に1枚目を釣るが、山田さん同様、煮え切らない状況が続いた。
しかしそこは実力派の2人。
微妙にバラケを抜き差しし、ブランクを感じさせない繊細な釣りで山田さんがポツリポツリとカウントを重ねていけば、生天目さんもどっしりと腰の据わった釣りを展開。
へらが寄ってきたのか次第に場所のアドバンテージも効いてきて、ジワジワと周囲を先行する釣りを披露していく。
開始から2時間が経過した9時30分時点で、生天目&山田ペアは全体で10位につける。
この時点で生天目さん7枚、山田さん5枚と依然厳しい釣りが続いていたが、周囲ではまだノーフィッシュの選手も散見されるなど、さらに厳しい状況。
試釣の成果も確実に現れていて、まずまずの滑り出しに見えた。
特にヘチ釣り座の生天目さんはこれからさらにアタリが増えていくことが期待されるから、これは早くも上位入賞も見えてきたのではないか!?
やはり甘くないトーナメント。アタリ、激減!
最高とはいかないまでも、まずまずの序盤戦となった2人。
ここから山田さんが粘釣し、生天目さんが地の利を生かして他を引き離していければ・・・。
「もしかして優勝もあるのではないか!?」という空気さえ漂ってきた。
しかし、やはりトーナメントは甘くはなかった。
雲ひとつない快晴。
風もない。
気温はグングン上昇し、上着を着ていては汗ばむほどの小春日和。
しかしそんな空とは裏腹に、椎の木湖の大型はますますご機嫌ナナメ。
全選手のウキから、どんどん動きを奪っていくのだった。
先に完全に止まってしまったのが、山田さんだった。
「もうどうやってもアタリがもらえないんですよ(苦笑)」
山田さんはそう言うと、10時15分に竿を10尺から8尺にチェンジ。
椎の木湖では手前寄りのほうが旧べらが濃い場合があり、エサ慣れした気難しさも承知の上で竿を短くしたのだ。
しかしこれが完全に裏目に出る。
通常、竿を替えた直後はパタパタと何枚か拾えたりすることも多いのだが、それもなく、ウキには10尺の時以上に緩慢な動きしか現れない。
完全にハマってしまった・・・。
一方の生天目さんも、終始迷いの中にいた。
が、しばらくして一筋の光明を見いだしていく。
「完全に真冬のような釣りです。バラケも小指の爪ほどの小ささで、基本『抜き』で、たま~に少しだけナジむくらい。鈎は今日は『ギガボトム』ではさすがに重すぎで、ハリス55㎝に『クワセマスター』2号の組み合わせですね。サワリからアタリまでの間が長いとカラになるので、割り切って早めのテンポで打ち返して、1回でもヒットチャンスを多く作るような我慢の釣りです」
さすがの生天目さん、当日の状況を冷静に見抜き、真冬の食い渋り時のような釣りでジワジワと復調していく。
決して派手な釣りっぷりではないが、完全に止まっている周囲の中で、明らかに一日抜きん出たペースでキロクラスを丁寧に拾っていくのだ。
「型が良いのが救いですね。今回は自分がチームを引っ張ると決めているので、このまま頑張ります!」
口を真一文字に引き締め、自らの釣りに集中していく生天目さん。
極度の食い渋りながら、さすがの洞察力で渋いなりのペースをつかんでいった。
しかし、どうしても苦しい釣りから抜き出せなかったのが山田さんだった。
竿を8尺にしたことが裏目に出たのか、さらにアタリが少なくなる。
そこをどうにかしようとバラケやハリス、鈎を替えて、さらにドツボにハマる・・・。
「生天目さんは釣っている。自分も釣らなくては…」の焦りが、さらなる悪循環を生み出していく。
竿が短くなった分、バラケや振り込みの自由度は上がる。
時折、激ヤワの大バラケをそっと落とし込んだりしてどうにか渋り切ったへらの食い気を刺激しようとするが、当日に限ってはこれが完全に裏目に出ている様子(メーターで釣っている人は小エサで共通していた)。
しかし「どうにかしよう」という山田さんの気迫が伝わってくる、そんなチーム戦ならではの「戦う姿勢」だった。
「たぶん、個人戦だったら諦めちゃう時合ですよね(苦笑)。でもチーム戦だから、途中で投げ出すわけにはいかない。どうにかしたかったんですが、いまの自分にはどうにもなりませんでした。あそこでまた竿を10尺に戻す冷静さもなかったし、時間も足りなかったですね。完敗です」
後に山田さんが振り返ったように、そのまま「試行錯誤の蟻地獄」にはまり込んで行った山田さん。
ついに浮上のキッカケを掴むことはできず、ラスト1時間はほぼノーカウントのまま大会を終えることとなった。
最終結果
生天目弘次さん 25枚 25.23㎏(個人8位)
山田剛弘さん 11枚 9.66㎏
合計釣果34.89㎏ 総合順位 10位
芯から楽しいチーム対抗戦。また来年も!
「良すぎる釣り座に浮き足立ち、パターンをつかむのが遅すぎました。反省です。また10位でしたね(苦笑)。でも山田さんと出られて嬉しかったですし、2人であれこれ作戦を立てたりして、何より試釣の段階からとにかく楽しかったです。結果としては不本意かもしれませんが、次に繋がる大会になりました。もちろん次回も山田さんと出場して、今度こそ表彰台を狙いますよ」
大会終了後、そう笑顔で語った生天目さん。
それを受けて、山田さんも清々しい表情を見せていた。
「今回は私が足を引っ張ってしまいました(笑)。ダメですねぇ。でも、生天目さんが言うように、本当に楽しかったです。どうにか釣行回数も増えてきたので、また次回頑張ります。久しぶりの釣り、久しぶりの大会は、最高に楽しかったです!」
個人戦にはない、独特の楽しさがあるチーム対抗戦。
結果は結果。
しかし結果にこだわれない「楽しさ」こそが、このチーム対抗戦の人気の秘密である。
今回、このすばらしい生天目弘次&山田剛弘ペアに密着させていただき、この大会の楽しさを再確認させていただいた想いだった。
大会中も快く取材を受けてくださった2人に感謝するとともに、大会に参加してくださった全ての皆様に心より感謝申し上げたい。
そこかしこで見られたチーム戦ならではのすばらしい戦いを、真剣な表情を、そしてすばらしい笑顔を、本当にありがとうございました!
■生天目弘次さんデータ
竿 「がまへら千早」8尺
道糸 1号
ハリス 0.6号 12―50→55㎝
上鈎 がまかつ「リフト」7号
下鈎 がまかつ「ギガボトム」2号→がまかつ「クワセマスター」2号
がまかつ(Gamakatsu) バラギガボトム フック 2号 釣り針
がまかつ(Gamakatsu) シングルフック T1 クワセマスター 2号 22本 68209
ウキ 「天生先」(自作)バルサボディ4㎝ 細パイプトップ
バラケ 「粒戦」100㏄+「粘麩」50㏄+「粒戦 細粒」25㏄+「サナギパワー」100㏄+水200+「セット専用バラケ」100㏄+「セットアップ」100㏄+「バラケマッハ」100㏄
クワセ 「力玉 大粒」さなぎ粉漬け 「感嘆Ⅱ」(さなぎ粉入り)10㏄+水10㏄
■山田剛弘さんデータ
竿 「がまへら千早」10尺→8尺
道糸 1号
ハリス 上0.5号 下0.4号 8―37.5㎝
上バリ がまかつ「改良ヤラズ」7号
下バリ がまかつ「クワセマスター」3号
ウキ 「天生先」(生天目作)バルサボディ4.5㎝ 細パイプトップ
バラケ 「粒戦」100㏄+「粒戦 細粒」50㏄+「セットガン」150㏄+水200+「セット専用バラケ」150㏄+「バラケマッハ」150㏄+「GTS」100㏄
クワセ 「感嘆」(さなぎ粉入り)15㏄+水13.5㏄
がまかつ(Gamakatsu) 改良ヤラズ 金 7号
がまかつ(Gamakatsu) シングルフック T1 クワセマスター 3号