伝統の「たたき網漁」が開始 水面でモノを「叩く」と魚が捕れるワケ
2021年12月17日 11:00
抜粋
福井の湖で、400年以上の歴史を持つ、伝統の「たたき網漁」が始まりました。この漁法、魚たちのとある性質を利用しているようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
伝統の「たたき網漁」
福井県若狭町にある連続した5つの湖「三方五湖」の一つで、最も内陸にある三方湖。ここで12月2日、400年以上の歴史を持つ、伝統の「たたき網漁」が始まりました。
たたき網漁は、水温が下がる冬に湖の底で冬眠している魚を捕る漁です。これを行う漁師たちは船に乗り、湖底近くに刺網を張ります。その後船上から青竹で湖面をたたき、魚たちを驚かせます。
すると、パニックになった魚たちが湖底近くに張られた刺し網に追い込まれ、漁獲されます。捕れるのは主にフナやコイなどの淡水魚で、刺身や洗いなど伝統的な調理法で食べられます。漁は3月末まで続けられるそうです。(『冬眠中の魚もびっくり 三方湖でたたき網漁(福井県)』FBC 2021.12.2)
叩かれるのは水面だけではない
上記の「たたき網漁」で叩くのは水面ですが、実はこのほかにも「叩く」ことで魚を捕る漁が存在します。その代表的なものが「石打漁」です。
これは、水中にある岩をほかの岩やハンマーなどで強く叩き、その岩の下にいる魚たちを漁獲するというものです。海や川、湖など、どのような水域でも効果が高い漁法です。
ただ、その効率の良さからその場にいる魚を根こそぎとってしまう恐れがあり、日本の河川では禁止されている場所が多くなっています。
このほか、地域によっては石を水面に投げ込み魚を驚かせて漁獲する「たたき網」と「石打漁」をミックスしたような漁も存在しています。
なぜ「叩く」と魚が捕れるのか
魚には他の生物にはない「側線」という器官が存在しています。これは水流や水圧、音波などの「振動」を感知するための器官です。
水中では空気中と比べると、とくに音や衝撃などの「振動」が伝達されやすい環境となっています。そのため、危険から身を守ったり、餌を見つけるためには「振動」を敏感に感知する必要がありました。
そのため魚たちは進化の過程で側線を発達させていき、結果として非常に敏感な器官になったのです。しかしそれゆえに強い振動に対してはとても弱く、大きな音ですぐにパニックになったり、ショックで仮死状態になってしまうこともあります。
たたき網漁や石打漁など各種の「叩く」漁は、魚のこの様な性質を利用したものだといえるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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