浜名湖の養殖牡蠣が窮地に 脅威となっている「2つの黒」とは?
2021年12月18日 11:00
抜粋
静岡にある日本有数の汽水湖・浜名湖。各地の汽水湖同様にカキの養殖が盛んに行われていますが、近年そのカキがピンチに陥っています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
牡蠣の一大産地・浜名湖
世界中で冬の味覚の代名詞となっている牡蠣。英語圏では「Rのつく月(9月~4月)」に美味しくなるとされ、我が国でも鍋物など冬の料理に欠かせない存在です。
牡蠣のうち、代表品種といえる「マガキ」は牡蠣の中でも塩分濃度の低い水域を好む種で、サロマ湖や厚岸湖など、海とつながる汽水湖に名産地が多くなっています。
静岡県にある日本で4番めに大きい汽水湖・浜名湖も同様の条件を持ち、地元では牡蠣の名産地としてよく知られています。獲れる牡蠣は肉厚で濃厚な味わいが特徴で、130年以上も養殖が続けられている歴史ある産地です。
牡蠣が「黒潮」でピンチ
そんな浜名湖の牡蠣養殖ですが、実はいま危機に見舞われています。近年、浜名湖の牡蠣養殖は深刻な不漁に襲われているのです。
長らく浜名湖の牡蠣の漁獲量は例年80tほどで推移していましたが、3年ほど前からじわりじわりと減少。去年はわずか8tと、例年の10分の1にまで落ち込んでしまっています。
その大きな原因として目されているのが、浜名湖のある静岡県西部の沖合を流れる暖流「黒潮(日本海流)」です。近年日本の沖合では黒潮が通常と違う流れになる「黒潮大蛇行」が続いてるのですが、これが起こると静岡県沿岸に、黒潮本流から反転し北上する流れが発生し、静岡県沿岸の海水温が上がることが知られています。
これに伴い、海に直接つながる浜名湖の水温も上がっています。冬の低水温期に大きく成長する声質を持つ牡蠣には、これが大きなダメージとなると考えられているのです。
牡蠣を苦しめる「もう一つの黒」
牡蠣不漁の原因はほかにもあるとされています。その中で、近年とくに問題になっているのが「クロダイ」の存在です。
タイの一種であるクロダイは、浅く塩分濃度の低い水域を好み、貝類を好んで食する性質があります。そんなクロダイにとって、浜名湖で養殖される牡蠣は大変なごちそうになってしまうのです。
浜名湖ではクロダイの食害が拡大しており、とくに稚貝が根こそぎ食べられてしまうとそれが成熟するはずだった翌年以降にも影響が出てしまうので、被害が大きくなります。
浜名湖のクロダイは、水温上昇や浜名湖の塩分濃度の上昇に伴い数を増やしています。一方でタイ類の中では食味評価が低いため、漁師もあまり獲らないので、数が減る要素がありません。
同様にクロダイによる養殖漁業の被害が拡大している瀬戸内海では、駆除や研究を目的としたクロダイ釣り大会が開催されています。多くの釣り人にとってクロダイは「最大の好敵手」であり、釣りを楽しみ漁業の助けになるとなれば一石二鳥。浜名湖でも同様の取り組みが試みられると面白いかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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