信州中南部の年取り魚『塩ブリ』を釣った魚で再現 6つの調理法で実食
2022年01月15日 17:00
抜粋
400年以上の歴史があると言われる信州中南部の年取り魚『塩ブリ』を再現してみました。いろいろな料理にアレンジもしてみたので、ぜひ参考に挑戦してみてください。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター宮崎逝之介)
年取り魚
『年取り魚』の話題は当サイトでも何度か取り上げてきましたのでご記憶のかたもいらっしゃるでしょう。年越しの豪華な食卓を彩る一品として、マダイやシャケやブリなど各地域伝統の魚を食す『年取り魚』の風習は古くから全国各地にあり、お節料理や年越しそばなどと並んで縁起のいいハレの食材とされている地域が多いです。
信州の『年取り魚』
筆者が暮らす信州の『年取り魚』は、地域によって大きく傾向が分かれ、北部は鮭、中南部はブリが優勢です。北部ではかつて千曲川流域でサケ漁が盛んだったといい、中南部には富山のブリが飛騨地方を経由して持ち込まれていたというのが定説です。
ご存知のように、ブリは出世魚の代表格とされるほど縁起もよく、見た目の豪華さもあり、かつては1年に一度のお正月ぐらいしか口にできない超高級魚だったようです。
富山からのブリ運搬方法
ここで素朴な疑問。今の時代なら、道路などのインフラが整備され自動車もあり冷蔵技術もあるので、数時間もあれば富山のブリを新鮮な状態で信州まで輸送することなど訳はない。しかし、400年前といえば江戸時代初期。当然ながら、モータリゼーションも電気による冷蔵技術もない。
この時代、ブリは富山から飛騨地方経由で何日もかけて人力で運んでいたそうです。何日もの間、どうやってブリを保存していたのでしょうか。
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塩ブリで長期輸送に適応
ネット検索してみるとすぐに答えが判明し、『塩ブリ』というキーワードが出てきました。『塩ブリ』はブリまるまる1本に塩をまぶし、熟成させ、干したもののようです。どうやら鮭の場合の『新巻き鮭』と同じようなものらしいです。
塩蔵にすることで長期保存と長期輸送を可能にしていたようです。なるほど。食べ方はさまざまで、そのままでも食べられるほか、茹でたり、焼いたり、お雑煮などにいれることもあったようです。
近年は馴染み薄に
ブリと並ぶ年取り魚である新巻き鮭のほうは今でも年の瀬が近づくと鮮魚店や百貨店などでよく目にしますが、『塩ブリ』なるものは筆者は見かけたためしがありません。生産地である富山県では今でも『塩ブリ』の生産業者があり、お土産用や贈答用などとしても販売されているようですが、信州では近年は鮮魚の状態でブリを購入するのが一般的です。
筆者のアンテナが低いせいかもしれませんが、『塩ブリ』は見ることも聞くこともまずない。年末年始のみならず、日常におけるブリの加工方法としても『塩ブリ』というのは馴染みが薄い存在です。
『塩ブリ』再現決意
この12月、筆者はジギングで上越の寒ブリをキャッチしたこともあり、せっかくなので年越しに向けて伝統の『塩ブリ』を再現してみることにしました。作り方は、富山県で『塩ブリ』を製造販売しているカネツル砂子商店様のブログを参考にし、筆者なりにアレンジさせていただきました。
『塩ブリ』は、本来はブリをまるごと使って作るようですが、さすがに素人にはハイリスクなので、今回は身の一部だけでトライしてみました。あくまでも素人が見よう見まねで作ったものであることをご承知おきいただきたいと思います。
『塩ブリ』の作り方
1、ブリを柵取りし、水で洗い、キッチンペーパーなどで水気をしっかり拭き取る
2、ブリの柵全体に薄く塩をまぶし、乾いた新しいキッチンペーパーや鮮魚用吸水シートに包み、ザル付きバットなどに乗せて冷蔵庫に3日間置く
3、ブリの柵を取り出し、干し網などに入れて外気に3日間ほどさらして乾燥させる。
これで完成です。
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年末年始に実食
さて、作った塩ブリを古人にならって、年末年始にいろんな食べ方で実食し、いにしえの信州のお正月気分を味わってみました。完成した塩ブリはラップにくるんでさらに1週間ほど冷蔵庫で保存したものです。
塩ブリの表面は色合いが少し濃くなっていましたが、表面を切ってトリミングしてみると中身はまだ食欲をそそるような色味がキープされていました。
そのまま食べる
薄くスライスしてそのまま頂いてみました。適度な食感と強めの塩気があり、酒が進みそうな味わいです。筆者的には好みです。皮は噛み切れないので取り除いておいたほうがよさそうです。今回はトライしていませんが、鮭のように日本酒に漬けて「酒びたし」でもイケそうです。
炙り
前項の「そのままスライス」した塩ブリをバーナーで軽く炙ってみました。そのまま食べるのと同様の食感と塩気でお酒のお供向きですね。炙ったことで香ばしさがプラスされました。
焼く
1~1.5cmほどの厚さに切って焼いてみました。塩抜きせずにそのまま焼いたせいか予想以上に塩気が強く、これだけで食べるのはちょっとつらい味わいでした。お茶漬けなどには向いているかもしれません。ですので、焼いて食べる場合はそのままではなく水で塩抜きをしてから焼くほうがよさそうです。
雑煮
かつて信州では塩ブリをお雑煮にも入れていたということなので、トライしてみました。前項の焼き塩ブリをお正月の雑煮にいれてみました。そのまんまではしょっぱすぎる焼き塩ブリでしたが、お雑煮に投入してみると少し塩気が薄まり、餅や野菜と一緒に少しずつ食べるとアクセントとなり、イイ感じになりました。
茹でる
いにしえの信州人は塩ブリを茹でて食べることもあったそうです。どうやって茹でるのかイメージが沸きませんでしたので、茹で方は、魚食文化普及活動家の上田勝彦さんオススメの『湯煮』にならってアレンジしてみました。
具体的には水に少量の料理酒を加えて塩ブリを野菜などと一緒に数分茹でてみました。切り身の厚さは『焼き』と同じくらいの1~1.5cmくらいの厚さにしてみました。茹でてみると、塩ブリの塩気が薄まり、ちょうどいい塩加減になりました。ポン酢も用意したのですが、ポン酢をかけずに茹でてそのままがちょうどいい味加減でした。焼くよりも茹でるほうがだいぶ食べやすい印象です。
番外編:ピザ
塩ぶりをスライスしたものをピザのトッピングとして乗せてみました。生ハムのように塩味がピザの味を引き締めてくれます。いろいろアレンジできそうです。
実食後の感想
塩ブリは塩分が多いので、そのまま食べる場合はスライスや炙りなど少量ずつにしたほうがよさそうです。焼きや茹でなど加熱する場合は塩抜きしたりするのがおすすめです。
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<宮崎逝之介/TSURINEWSライター>
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