琵琶湖の厄介者『外来水草』が堆肥に変身 瀬戸内のオリーブを救った?
2022年01月29日 11:00
抜粋
琵琶湖で猛威を振るう外来水草がいま、瀬戸内の特産品の栽培に非常に役立っています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
琵琶湖の水草が「肥料」になる
琵琶湖を要する滋賀県で、いま「水草から作られた堆肥」が話題になっています。この堆肥は滋賀県長浜市の建設会社によって商品化されたもので、2019年より販売が行われています。
これまでも、このような「水草を加工した堆肥」が自治体により作られており、希望者に無償での配布が行われていました。しかし、これまでの堆肥が水草を刈り取ってから2年間ほどの長期発酵を施す必要があったのに対し、今回商品化されたものは、発酵期間が2ヶ月ほどと非常に短いのが特徴だといいます。
この商品は、一般的な肥料と比べて価格が高いことなど課題はありますが、琵琶湖の環境改善を目指すプロジェクトに参画するなどして、PRを行っていくといいます。(『琵琶湖の厄介者は人気者…堆肥化したらご当地作物に驚きの効果』読売新聞 2021.1.9)
琵琶湖で猛威を振るう水草
琵琶湖ではいま「外来水草」による環境被害が大きくなっています。1994年に発生した琵琶湖の大渇水以降、琵琶湖大橋より南の水深の浅い水域である「南湖」を中心に、外来種の水草が異常発生しているのです。
ここ数年は年間10,000tもの外来水草が発生していると見られており、なかでもとくに深刻なものが、2014年に特定外来生物に指定された「オオバナミズキンバイ」です。
他にも南湖では「史上最悪の侵略的外来植物」と言われるナガエツルノゲイトウや、ミズヒマワリなどの厄介な外来水草が確認されています。このような水草に水面が覆われてしまうと、水中に酸素が行き渡りにくくなり、生態系や水質に悪影響を及ぼしたり、水生生物がすみかを失ってしまうなどの被害が発生するため、問題となっているのです。
瀬戸内の特産品オリーブに恩恵
今回商品化された堆肥の特徴は、様々な菌が生きていて活発に活動していることだといいます。これにより、畑や果樹園にまくことで作物の栄養になるだけでなく、病原菌やウイルスの動きを抑制することが期待されます。
現在この堆肥は様々な作物の栽培現場で利用されていますが、とくに効果が上がっているのが瀬戸内特産のオリーブ。
我が国におけるオリーブの代表的な病害に「炭そ病」というものがあるのですが、これにより壊滅状態であった畑にこの堆肥を施用したところ、復活し再び収穫ができるようになったという例もあるといいます。
この他にも、淡路島の名産であるタマネギの栽培などで効果が上がっているそうです。今後より広い範囲で利用されていくことが期待されています。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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