沖縄の代表的な魚料理「マース煮」は磯臭い魚ほど美味くなる?
2022年07月22日 17:00
抜粋
魚を塩水で煮るだけという沖縄の郷土料理「マース煮」。非常にシンプルな調理法ながら驚くほどに美味しくなります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
沖縄の郷土料理「マース煮」とは
本土から大きく南西に離れ、独特の文化が多く残っている沖縄県。周囲を海に囲まれていますが、本土と違って肉食が禁止されることがなかったために伝統的に肉料理が好まれ、意外にも魚の消費量は多くありません。
そのためか沖縄には、他の食材と組み合わせるような手の込んだ魚料理があまり存在せず、一方で塩焼き・煮付けなど本土で一般的な調理法もまたさほど好まれないようです。
しかし、そんな沖縄で好んで用いられるの魚の調理法があります。それは「マース煮」。マースとは沖縄方言で食塩を意味し、マース煮は魚を食塩水と泡盛で煮きっただけという大変シンプルなもの。当地では魚種を問わずこのマース煮にされます。
なぜ「マース煮」にするの?
しかしなぜ、沖縄でもこのマース煮が好まれるのでしょうか。
沖縄の魚の特徴としてよく言われるのが「淡白である」ということ。一年中温暖な海で過ごしているせいか、脂ののりが良い魚はたしかにさほど多くありません。
そのため、沖縄の魚を塩焼きや煮付けなどにしてもその仕上がりはぱさついてしまい、あまり美味しくないと言われます。
その一方、これは筆者の個人的な感覚でもあるのですが、沖縄でよく食べられている魚には、ベラやハタ類など「良い出汁の出る」魚が多いように思います。
マース煮は「魚から出た旨味を、煮詰めていくことで再び魚に戻す」といった調理法です。そのためこれらの魚はマース煮にして美味しくなるものが多いのです。
マース煮にして美味いのは「磯臭い」魚?
さらに、これも個人的な感覚で恐縮なのですが、マース煮にすると美味しい魚には、本土において「磯臭い」とされて嫌われるものが多いように感じます。
例えばアイゴ。磯臭さから「バリ(小便)」と呼ばれるこの魚は、沖縄では人気の食用魚で、マース煮の材料としても最もポピュラーです。
またニザダイに代表されるニザダイ科魚や、磯に棲む大型のベラ科魚などもマース煮で好まれますが、いずれも皮に磯臭さがあり、本土では嫌う人も多いです。しかしこれらの魚をマース煮にすると、皮目からほんのり漂う磯臭さが風味のアクセントとなるように思います。
加えてこれらの魚はさらに皮のゼラチン質からも良い出汁が出ることから、そもそも煮込み料理に向いています。これらの理由から、マース煮にするとびっくりするほど美味しくなるのです。
もし釣れた魚を持ち帰ってさばいてみたけど、予想外に磯臭くて難儀した……というようなときは、ダメ元でマース煮にしてみるのも面白いかもしれません。泡盛を多めに入れ、場合によっては生姜を少し入れたり、バターをひとかけら落としてみたりするとよいでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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