環境に優しくて持続可能な『定置網漁』に吹く【TACの逆風とは?】
2022年08月19日 11:00
抜粋
環境に良い、持続的な漁法として世界的にも評価の高い日本の定置網漁。しかしその一方でいま、定置網漁とその他の漁法との間で「摩擦」が発生するかもしれない状況となっています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)


SDGsな漁法「定置網漁」
世界的に魚介類の消費量が増えている昨今。それに伴い発生している海洋資源の先細りや漁獲量の減少を懸念する中で、漁業におけるSDGs(持続可能な開発)は非常にホットなトピックとなっています。
そしてそんな状況の中、国際的にも注目を浴びているのが我が国で行われている定置網漁です。
定置網漁(提供:PhotoAC)定置網漁は網の中に入ってきた魚のうち、最も奥まった「袋網」に入ってきたものだけを獲るという漁法です。そのため、最初に網に入った魚のうち実際に漁獲されるのは2~3割ほどであり、根こそぎ獲るということが起こりません。
加えて、海底の環境ごと攫ってしまう底引き網などと異なり環境の改変が少ない、漁場が近いために燃料の消費が少なくて済むなど、様々な点でエコであると考えられており、持続可能な漁であるとされているのです。
定置網漁に逆風?
その一方で、実は今日本の定置網漁はとある「危機」を抱えています。
定置網の水揚げ(提供:PhotoAC)先月14日、日本定置漁業協会の会長らが水産庁を訪問し、同庁長官に対して10の項目が記載された2022年度統一要望を提出しました。そこには「漁獲可能量(TAC)管理における定置漁業管理手法の検討」という項目があり、「定置網漁の特性に配慮してほしい」という要望を伝えているといいます。
実はいま、このTACと定置網漁の間で避けにくい摩擦が発生しており、問題になりつつあるのです。
資源管理ができない?
我が国では2020年に「改正漁業法」が施行されました。この改正法の最大のトピックは簡単に言うと「資源管理について『漁獲可能量管理』の形に軸足を移す」ということになります。
漁獲可能量(Total allowable catch、TAC)とは、水産資源の維持のため、指定された魚種について、それぞれの魚種ごとに「捕獲できる総量」を定めるものです。全国でひとつの基準値となっており、これの上限を超えないように漁獲量が管理される必要があります。
しかし、定置網は上記の通り「入るも出るも自由」な漁であり、特定の魚種を狙って漁獲することが難しく、狙っていないものが大量に穫れてしまうということもしばしば起こります。
獲れる魚を選びにくいという弱点がある(提供:PhotoAC)そのため、TACが指定されているスルメイカやクロマグロといった魚種がドカッと定置網に入ってしまうことがあり、ときにその量が無視できないほど大きくなります。
他の漁との摩擦の可能性
その場合でも獲れたものは漁獲量にカウントされてしまうため、スルメイカの釣漁やマグロの巻き網漁などといった、本来これらの魚介を専門に狙う漁において漁獲できる量が削られてしまいます。その結果、漁業者や漁業者団体間での摩擦が起こる可能性があるのです。
これについて、現状では決定的な解決法というものが存在しません。ただ、魚種判別が可能となる魚探が普及することで、定置網の設置や水揚げの際に注意したり、獲り控えをするようなことが可能となるそうです。現実的に可能な範囲で最善の努力をしていくしかない状況だと言えるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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