年々ひどくなる東京湾の「貧酸素水塊」 東京湾で一生を過ごす魚に危機
2022年08月20日 11:00
抜粋
海に起こる異常と聞くと「赤潮」を思い浮かべる人は多いと思いますが、いま東京湾では、赤潮よりも被害が大きくなりがちな「貧酸素水塊」が大規模に発生しています。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)


東京湾で「貧酸素水塊」が発生
いま、東京湾奥の広い範囲で、海水に異常が発生しています。その異常とは「貧酸素水塊」というもの。これは字の通り「水中溶存酸素量が極めて不足している海水の塊」を指し、これが発生している水域のことを指す場合もあります。
貧酸素水塊の発生している海(提供:PhotoAC)5月下旬頃から川崎港や横浜港、船橋港、千葉港周辺の海水がこの貧酸素水塊となっており、海水中の溶存酸素量が著しく低い状況が続いています。そしてはじめは湾奥部の港湾周辺に限られていたのですが、気温の上昇とともにより広い範囲に広がっていきました。
今月15日時点では、東京内湾(富津と観音崎を結んだラインから北側)の広範囲が貧酸素状態にあります。「海水1Lにつき溶存酸素量2mL以下」という無酸素に近い状態の水域も内湾の半分ほどを占めています。
貧酸素水塊はなぜ発生するのか
貧酸素水塊は、東京湾のような閉鎖的内湾ではしばしば発生し、ここ数年は毎年のように大規模に起こっています。
初夏になり日差しが強くなると、表層の海水が温められ、海底の冷えた海水との間に比重の差が生じます。その結果、表層と低層の水がきれいな層を形成し、互いに混じり合わなくなります。
真夏の横浜港は貧酸素水塊が発生しやすい状況になる(提供:PhotoAC)海の低層では、海底に沈殿した有機物の分解が微生物によって絶えず行われており、酸素がどんどん消費されていきます。しかし上記の通り、表層の酸素を多く含む水と混ざり合うことはないため、やがて低層の海水中の酸素がほとんどなくなってしまい、貧酸素水となります。
閉鎖的な海域では海水の比重差が生じやすく、さらに流入河川から栄養塩がもたらされるためそれを餌とするプランクトンが増え、その死骸(=有機物)も増えるために貧酸素水が生み出されやすいとされます。さらに東京湾のような大都会に面した内湾では、生活排水や工業排水に含まれる大量の栄養塩が河川を通じて流れ込み、常にプランクトンが多い状態にあるため、より貧酸素水塊が発生しやすいのです。
東京湾の魚がいなくなる!?
貧酸素水の中で生きていける生き物なんていないように思いますが、実際には酸素を必要としない嫌気的細菌が活発に活動しています。そして彼らはその活動に伴って、猛毒の気体である硫化水素を発生させます。
そのため貧酸素水塊の中では、無酸素状態と硫化水素のダブルパンチによってほとんどの生き物たちは生きていけなくなってしまいます。
更に、強い風が吹いて表層水が流されるなどすると、海中の貧酸素水が海面にまで上昇し、硫化水素が酸素と混ざり合って白い結晶となり、海が青白色となります。この状態を東京湾では青潮、伊勢湾や大阪湾では硫黄の悪臭がすることから苦潮と呼びます。青潮や苦潮が発生すると浅場の生き物たちも逃げ場をなくしてしまい、死滅してしまいます。海中がまさに地獄と化すのです。
東京湾で発生した青潮(提供:PhotoAC)カレイやシャコにダメージ
東京湾ではここ数年、湾内の広い範囲で貧酸素水塊が発生するようになっています。これにより、一生を湾奥部で過ごすカレイやシャコなどの資源が極めて大きなダメージを受けていると考えられています。かつては江戸前の代表的な寿司ネタであったこれらの魚介類ですが、今では幻状態で、資源の枯渇すら心配されています。
今後、気温の上昇トレンドが続き貧酸素水塊の範囲がより広がれば、東京内湾すべてが生物の棲息に不向きな状況になる可能性すらあります。これ以上の富栄養化の抑制、貧酸素水塊を生み出しにくい干潟など浅瀬の造成などといった対策を早急に行う必要があると言えるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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