【タチウオのちょっと変わった生態】 共食いするほど獰猛なのに繊細?
2022年09月18日 11:00
抜粋
今回は全国の釣り人から大人気のターゲット『タチウオ』の生態について調べてみました。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
タチウオ(太刀魚)とは
タチウオは「スズキ目・サバ亜科・タチウオ科」のサカナです。全身が銀メッキでピカピカに光っているような体色をしており、非常に細長く、鋭い歯を持っているのが特徴です。
その見た目が刀のように見えることから「太刀魚」という名前と漢字が付けられてと言われています。
少し前までは船から釣るサカナのイメージが強かったサカナですが、近年では陸から、しかも都会のど真ん中の海でも釣れることが分かり、様々な釣り方ができる人気のターゲットとなっています。
タチウオの体の特徴
タチウオは一般的な「サカナ」と比べると、少し変わった体の構造をしています。非常に長い背びれはあるものの、胸びれ、腹びれや尾びれは退化していて存在せず、ウロコもありません。
また、鱗が存在しない代わりに、「グアニン色素」という層が体表を覆って体を保護しています。このグアニンは生きている間は常に新しいものが生成されていますが、指で触ったり、傷がつくだけで簡単に剥がれてしまいます。
また、このグアニン色素は以前まで模造真珠などの工業製品の原料や、マニキュアのラメとしても活用されていました。
タチウオの生息域
タチウオの生息域でもっとも有名なのは関西地方、特に瀬戸内海で、 東北以南の海に広く棲息しているとされてはいますが、暖かい海を好む傾向にあります。
国内だけでなく海外の海にも広く棲息しており、アジア諸国やオーストラリア、アフリカなどにも近縁種が存在しています。
韓国では大人気食材
韓国では食品としても非常に人気のあるサカナですが、乱獲によって漁獲量が減り、資源減少に伴って日本からの輸出が増えています。韓国ではそれほどに人気のサカナだということに驚きですね。
泳ぎ方の特殊
タチウオは頭を上にして泳ぐ立ち泳ぎができるサカナです。
基本的には水中では縦姿勢で頭上を通るエサを狙いますが、横に逃げるサカナを追う時や潮の流れによっては横向きになることもあるようです。
日本のタチウオは別種?
タチウオは見た目が似ているサカナが多く、判断がしづらい上に、未成魚と考えられてきたものが、実は全く別の種類の小型タチウオだったなど、それが原因で漁業交渉の場でもめることが多いサカナだったようです。
東北以南の海外を含めた暖かい海に広く分布していると説明しましたが、日本近海に分布するタチウオは、かつて他の地域のものと別種、あるいは別亜種とされ、「Trichiurus japonicus」の学名があてられていました。
近年では世界のほかの水域に棲息する「Trichiurus lepturus」と太平洋東岸に分布する「Trichiurus nitens」などをすべて同種として扱う場合が増えてきていますが、いまだに同種なのか別種なのか論争は絶えていません。
釣り人はタチウオの大きさに敏感?
タチウオは釣り人によって大きさや太さを特に評価されるサカナです。
地域によって指標は変わりますが、一般的には体長120cm以上のものを「ドラゴン」と呼びます。
しかし地域によっては100cm以上あればOKだったり、反対に指5本分の太さを有していないとダメだったりと、明確ではありません。
そのため、協議会などではこういった背景から、指のサイズをデジタルに○○cmとし、統一した基準で測定できる「ドラゴンスケール」というものが存在しています。
しかし、タチウオの中には超巨大なものも存在しており、140cm、指8本を超えるものを「神龍(シェンロン)」と呼んでいるそうです。
釣ったサカナのサイズがここまで細かく決められていることは非常に珍しく、オンリーワンのサカナだと言えます。
性格はどう猛だけど繊細
タチウオは鋭い歯を持つことからも想像できる通り、性格は非常にどう猛です。
好物はイカや小型のサカナですが、気が立っている時は群れの仲間を共食いすることもあります。釣りの場面ではこの共食いが良く起こり、釣り上げている最中にさらに大きなタチウオが食いついてくることもままあります。
一方で、どう猛ではあるものの、繊細な面もあります。水族館などで展示されているタチウオは環境の変化にとても敏感で、カメラのフラッシュなどに驚き、水槽から飛び出してしまうこともあります。
また、群れに新しい個体を入れようものなら、元からいたタチウオたちは全滅してしまうこともあります。非常に気が強くどう猛ではありますが、とてもセンシティブな一面があると思うと可愛くも思えますね。
釣って楽しい食べておいしいサカナ
釣り人からは昔から人気ではありますが、一般には流通があまりしていなかったタチウオ。
最近ではスーパーの鮮魚コーナーでも見かけることがあり、その美味しさを知る人も増えている印象です。刺し身でも、焼きでもなんだも美味しいタチウオはこれからのシーズン最盛期を迎えます。
ぜひ自分の手で釣って、食べてみて下さい。その際には指何本分だったかしっかりチェックしてみて下さいね。
<近藤 俊/サカナ研究所>
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