投げ釣り愛好家が伝えたい【釣り場で出会った3つの「ありがとう」】
2023年01月01日 11:00
抜粋
釣り場では魚だけではなくいろいろな人との出会いもある。今回は私が過去に釣り場で出会った方々とのエピソード、特に「ありがとう」と言いたくなったエピソードを三つ紹介したい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター牧野博)


関西の釣りの思い出
シティーアングラーの場合、釣りを楽しむためには住んでいる町からある程度の時間をかけて釣り場に向かうことが多くなる。
例えば、大阪からの海釣りの釣行先なら、手近な場所だと播磨方面、泉南方面、少し足を延ばせば紀南や丹後・若狭湾周辺など、昨今は高速道路が伸びたので、山陰や紀東方面なども、比較的短時間で行けるようになった。
紀南方面は特に磯釣り場として人気が高く、今から約40~50年前には、天王寺から新宮方面に向かう紀勢線には、普通と急行1本ずつ、2本の定期の夜行列車が、名古屋方面からも定期の急行の夜行列車が1本走っていた。春から秋の釣りシーズンはそれでもさばききれず、天王寺-新宮間で臨時の普通夜行列車(いそつり号と愛称がつけられていた)が運転されるほどだった。
大学時代に、卒論実験で遅くなった時、帰宅するのに定期の夜行普通列車を何度か利用しているが、乗客のほとんどが磯釣り客のときも。特にグレ釣りのアングラーが多かったと記憶している。私もすでに釣りを始めていたので時折話しかけると、楽しそうに話をされる。その話を聞いているうちに卒論実験の疲れも消え去っていた。和歌山で降りる時、頑張ってくださいと声をかける。列車に乗っている多くのアングラーは周参見から串本で下車するものと思われるが、すでに眠っている人もいる。そんな情景が展開されていたのである。
今、釣りがティーンエイジャーや若い年代の女性に、かなり注目されているようだ。釣りの面白さというのは、一人一人のアングラーによって感じ方が様々である。大釣りに遭遇した。競技会で入賞した。投げ釣りの場合なら、飛距離が伸ばせた、ランク魚を釣った、数釣りができるようになってきたなど。
それらの釣果や、釣り技術の面とともに、釣りを取り巻く様々なエピソードも、釣りの面白さのスパイスになっているはずだ。つたない自身の釣りの経験の中から、いくつかを紹介してみたい。
1、漁業者とのできごと
私は投げ釣りから釣りに入門した。これは父の影響であるが、今もメインの釣りジャンルである。投げ釣りというのはフィールドを選ばない。砂浜はもちろんのこと、漁港内の波止、河口部、砂泥底の周辺の磯など、ポイントは多彩だ。しかしこれらはプロの漁業者の生活の場である。
以前、ある漁港の波止でキスの引き釣りを楽しんでいた時のこと、漁港内というのはミオ筋(船道)が一つの定番ポイントである。そこを狙っていると港に入る遊漁船が接近してきた。当然、早めにリーリングして仕掛けを回収しようとするが、このときは遠投していた。「間に合わないかな」と思ったその瞬間、その遊漁船は速度を落としてくれたのである。
リーリングスピードを速め、何とか仕掛けを回収できた。「ありがとう」と船に向かって声をかけると、「何釣ってんのよ」と船頭さんからの声、短時間のやりとりだったので仕掛けを見せて「キス」と舌足らずの単語だけで返してしまったのだが、いまでもはっきりと記憶している。
仕掛けを無事回収できて、「ありがとう」というエピソードであるが、本来、ミオ筋は船の通行路であり、道糸が船とクロスしてしまったらアングラーの方が悪いのだ。それにしても非常に余裕のある船頭さんだと思った。それ以来、漁港で投げ釣りをするときには船の航行にかなり注意をはらうようになったと思う。
2、地域の方々とのできごと
海岸の姿というのは数十年のあいだにかなり大きく変貌する。アングラーが見つめているのは、釣り場に立った今、その時の海岸の姿であるが、昔の海岸の様子を知っていることは、ポイントを選ぶうえで参考になる。
以前、中紀の印南漁港でキス釣りをしていた時、地元の方が話しかけてこられた。何を釣っているのですかと問われたので、「キスです。」と返事する。しばらく話をしながら釣りをする。キス狙いの釣り人は比較的少ないようであるが、昔の海岸の様子をお伺いすることができた。漁港の波止が整備される前はここが砂浜海岸だったそうで、印南漁港には小さな川が流れ込んでいるが、そこを中心にして砂浜が広がっていたとのこと。
印南漁港は外に岩礁地帯が広がっているので、初めて訪れたアングラーにはキスのポイントとは思えない。私も投げ釣りを本格的に始めるまでは、キスが釣れる場所とは知らなかった。しかしこの地元の方の話を聞き、砂泥底でありキスが釣れる場所であること、河口部周辺にキスが寄りやすいこともよく理解できた。地元の方の話は、じっくりと耳を傾けるとポイントを考える上でヒントになることが多いものである。
護岸された港(提供:TSURINEWSライター牧野博)3、通りすがりの見物の人とのできごと
約50年前にさかのぼる。これは今の時代だとちょっとありえない話かもしれない。
冒頭に列車の釣り人の話をしたが、そのころ小学生だった私は、父に連れられて初めて投げ竿を振ったのである。ある時、父と北陸方面に釣りに行くことになった。北陸線は幹線なので、当時下りの富山、直江津方面に向けて特急・急行の定期の夜行列車が合わせて5~6本は出ていたと思う。大阪市内でエサの調達に少し手間取り、最終の夜行急行に乗り込み、小松駅で降りる。まだ未明で、駅のホームの待合室のベンチで少し仮眠した。明け方、タクシーで釣り場に向かう。ポイントがどのあたりだったかは覚えていないが、投げ竿を3本位出した。
なんだか雲行きが怪しい。一応カッパは着ているが、パラパラと雨がこぼれてきた。そのとき、スーツ姿の男性二人が見物に来られたのである。医薬品の営業マンの方で、クルマで外回りをされていたようだ。父が少し話をしていたが、よかったら駅まで乗っていきませんかと言ってくださった。仕事中で申し訳ないがライトバンに同乗させていただく。このときは本当に助かった。父は駅で降りたときに少し待ってもらい、駅の売店で缶コーヒーやお菓子を買ってお礼に渡したようだ。
今の時代、社用車に部外の人を乗せて営業ルート以外の場所に行くなどは、まずできないことだと思う。営業マンの会社の名前などは全く覚えていないが、この時の営業マン二人に心から「ありがとう」と申し上げたい。
増やしたい「ありがとう」の場面
紀の川河口の釣り場風景(提供:TSURINEWSライター牧野博)昨今、コロナ渦の釣りブームである。初心者やヤングのアングラーも徐々に増加してきている。趣味や娯楽が多様化した今、これはある意味注目に値することではないかと思う。それだけ釣りという世界に興味を持って見つめている人が多いのであるが、新世代のアングラーはポイントや釣りの方法などについて、まずネットから情報を入手すると思う。
しかし釣り場に出てその時、その潮回りや水温の状況で、釣果をあげてゆくには、ネットのポイント情報だけではなく、臨機応変に自分の釣りのスキルの中で対応してゆく必要がある。
釣り場のマナーなどに関しても同様で、私たちの世代が実際のフィールドで先輩から学んできたような機会が、新世代のアングラーには少なくなっているように感じる。例えば、先釣者がおられた場合、声をかけてから少し離れて釣り座を取ったり、投げ釣りでオマツリしてしまった時など、「すみません」と声をかけてゆっくり巻きながらお祭りをほどくなどのことがそうである。
場所によっては漁港が釣り禁止となるなど、漁業者とアングラーの間にもあまりよくない雰囲気が生まれているのも確かだ。しかしプロの漁業者の方々は、決して我々アングラーを敵対心で見ているのではない。実際、海の様々なことを尋ねてみると、とても親切に教えてもらえると思う。
釣りはバーチャルの遊びではなく、海洋や河川という実際のフィールドで手足や頭を働かせて楽しむレジャーである。そこには、同じ場所を仕事場にしているプロもいる。地域の方々もいる。そこで少しずつ「ありがとう」の場面を増やして行くことができれば、アングラーにとってもより快適に釣りが楽しめるようになると思うのである。
<牧野博/TSURINEWSライター>
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