東京五輪で日本産の魚介類を提供できない理由 必要なエコラベルとは?

2020年04月03日 11:00

[TSURINEWS]

抜粋

延期が決まった東京オリンピック。実は、会場で提供される料理に、日本の魚介類をほとんど使うことができない可能性があることが指摘されていました。何が問題なのか、調べてみました。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

東京五輪で日本産の魚介類を提供できない理由 必要なエコラベルとは?

東京五輪で日本産の魚は提供不可?

東京オリンピックの延期が正式に決定しました。未曾有な世界危機の中でやむを得ないことだと感じますが、観光業や飲食業などオリンピック関連売上を見込んでいた業界からは悲鳴が上がっています。食材を提供するはずだった農業・漁業界にも大きな影響がでるものと思われます。

しかし、調べてみると、漁業に関してはそもそもまったく別の危機を迎えていたことがわかりました。というのも、今のままでは東京オリンピックで、日本産の魚介類を提供することができない可能性が高いのです。

オリンピック食材のエコラベルとは?

いま、世界的では漁業資源の需要の高まりと乱獲の懸念を踏まえ、「持続可能な漁業をすることが必要である」という認識が深まっています。それに伴い、天然魚介資源の認証制度であるMSC(Marine Stewardship Council、海洋管理協議会)と養殖魚介資源のASC(Aquaculture Stewardship Council、水産養殖管理協議会)の2種類のエコラベルが制定され、基準を満たしている漁業団体や漁獲された水産物を認証しています。

これらのエコラベル認証を受けた魚介は「持続可能な漁業により水揚げされたもの」だということができるのです。

東京五輪で日本産の魚介類を提供できない理由 必要なエコラベルとは?「獲り方」も評価される時代(提供:PhoteAC)

そして、国際的な祭典であるオリンピックでもこの認証制度は評価されており、2016年リオオリンピックにて「ホスト国が提供する食材には、MSC、ASCのエコラベル認証を受けたもののみを使用する」という宣言が出されています。(『東京オリンピックで、国産魚を提供できない可能性について』「勝川俊雄公式サイト」2014.2)

これは東京オリンピックでも引き続き効力があるものと考えられています。

日本でMSC認証を受けた漁業は5つだけ

しかし、これらのエコラベルについて、日本国内では殆ど知られていません。2019年9月時点で、日本国内の漁業でMSCの認証を受けているものは

・ホタテガイ(北海道)
・アカガレイ(京都府)
・カツオ(宮城県)
・ビンナガ(宮城県)
・カキ(兵庫県)

の5つのみとなっており、ASC認証された養殖魚介類を含めても、全ての魚介類流通量の中ではごく僅かです。(『MSC認証・ASC認証を取得している日本国内の漁業・養殖場』「サステナブル・シーフード」2019.9)

つまり、このままでは東京オリンピックで提供される魚介類の殆どが輸入品で賄われてしまうという可能性があります。

東京五輪で日本産の魚介類を提供できない理由 必要なエコラベルとは?和食は国際的に高い評価を受けているが・・(提供:PhoteAC)

この一方で日本では、国内の漁業事情に合わせた認証であるMEL(マリン・エコラベル・ジャパン)という制度を規定しており、持続可能な漁業について独自のブランディングを行っています。

しかしあくまで国内規定のため、国際的な認証が得られているわけではなく、MEL認証を受けた魚介類を東京オリンピックで提供できるかどうかは、現状では不透明なのです。

持続可能な漁業への意識

そもそも日本の漁業は、クロマグロの国別漁獲枠規定を守ることができなかったことで世界的な信用を失っています。その状態で独自のエコラベルを発行したところで、世界に受け入れられる可能性は低いと言わざるを得ません。

そもそもMSCにしてもMELにしても、我々日本人の中でどれだけの人がその存在を知っているでしょうか。「漁業の持続可能性」について日頃から意識している消費者がどれだけいるでしょうか。この意識の低さが、今回「自国開催のオリンピックで自国の魚介類を提供できないかもしれない」という歯がゆい事態をまねいてしまうかもしれないのです。

東京五輪で日本産の魚介類を提供できない理由 必要なエコラベルとは?「持続可能な漁業」について考えよう(提供:PhoteAC)

オリンピックの延期をポジティブに捉えるならば、この点について考える時間ができたと考えましょう。

今から申請してもオリンピックまでにエコラベル認証が受けられるかはわかりません。しかし日本が今後漁業を主要産業とし続けていくために「持続可能な漁業」という観点は常に必要になります。そのための意識を、オリンピックをきっかけに一人ひとりが持つことが大切になるのではないかと思います。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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